イーロン・マスク氏、2028年米大統領選でバンス氏支援検討か?トランプ氏との複雑な関係と新党計画の行方

米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は19日、実業家イーロン・マスク氏が2028年の次期米大統領選で共和党のバンス氏が立候補を決めた場合、資金援助を検討していると報じた。財政支出を巡るトランプ前大統領との関係悪化やマスク氏自身の新党計画の動向と絡み、マスク氏の米国政界における影響力が改めて注目されている。

米大統領選への影響が注目される実業家イーロン・マスク氏米大統領選への影響が注目される実業家イーロン・マスク氏

WSJ報道:マスク氏のバンス氏支援検討

ウォールストリート・ジャーナル紙によると、マスク氏は企業経営に専念したいとの意向を伝え、新党結成による共和党有力議員との対立は避けたい姿勢を示している。しかし、来年の中間選挙を前に態度を変える可能性も指摘されており、バンス氏に対する支援検討の話は既に関係者に伝えられていると報じられた。

マスク氏とバンス氏による報道否定

この報道に対し、マスク氏は20日、自身のSNSを通じて「ウォールストリート・ジャーナルが言うことを真実と受け取ってはいけない」と強調し、資金援助の可能性を否定した。バンス氏も同日、FOXニュースに出演し、「私はマスク氏や他の支援者と2028年(の大統領選)について話したことはない」と明確に述べた。さらに、バンス氏はマスク氏の新党計画を「大きな間違いだ」と述べ、計画中止を促した。

バンス氏の台頭とマスク氏新党への共和党の思惑

バンス氏は、トランプ前大統領から2028年の大統領選の共和党候補として「現時点で有力候補だ」との評価を得ており、党内での存在感を高めている。マスク氏の新党が来年の中間選挙で議席を確保し、2028年大統領選で影響力を持つことは、バンス氏や共和党にとって脅威である。そのため、共和党はマスク氏に新党立ち上げを思いとどまらせ、再び自陣に引き込むことを狙っていると見られる。

トランプ政権との蜜月と亀裂

マスク氏は過去に、2020年の大統領選でトランプ氏に2億9千万ドル(約430億円)近くを献金し、勝利に大きく貢献した。2021年1月に発足したトランプ政権では、支出削減を図る「政府効率化省(DOGE)」で事実上のトップを務めるなど、トランプ氏との間に蜜月関係を築いた。しかし、人員削減などを巡って閣僚と衝突し、政権の目玉政策であった大型減税・歳出法案が財政悪化を招くと批判したことで、トランプ氏との関係に亀裂が生じた。

「アメリカ党」設立の背景と戦略

2021年5月末にトランプ政権を離脱した後、マスク氏は同法案を激しく批判し、トランプ氏との間で非難合戦に発展した。そして、同年7月には「アメリカ党」の設立を表明するに至る。マスク氏が描いていた戦略は、共和党と民主党が拮抗する議会において少数議席を獲得し、「キャスチングボート」(決定票)を握ることで、法案修正などで影響力を行使するというものだった。

イーロン・マスク氏の政治的動向は、2028年米大統領選への関与、トランプ前大統領との関係、そして新党計画の行方を含め、米国政治の重要な要素であり続けている。ウォールストリート・ジャーナル紙の報道とそれに対する双方の否定は、水面下で様々な駆け引きが繰り広げられていることを示唆しており、今後の動向が引き続き注目される。

参考文献

  • ウォールストリート・ジャーナル電子版 (The Wall Street Journal Online Edition)
  • FOXニュース (FOX News)
  • イーロン・マスク氏のSNS (Elon Musk’s Social Media)