歌手キム・ジョンミンの息子であるキム・ドユン選手(17、日本名・谷大地)が、U-17(17歳以下)サッカー日本代表チームに再び選出された。今年4月に開催されたU-17アジアカップに続き、2度目の選出となる今回の機会は、来月フランス・リモージュで開催される国際親善大会への出場を意味する。この選出は、日韓両国のサッカーにおける国際的な才能の流動性と、個人の選択に対する社会の認識の変化を浮き彫りにしている。
キム・ドユン選手の軌跡と日韓の選択
キム・ドユン選手は、4月のアジアカップでのネパール戦で4得点、カタール戦で2得点を挙げるなど、その実力を高く評価されている。彼は歌手キム・ジョンミンと谷ルミ子氏の次男であり、日韓の二重国籍者として知られている。サッカー選手としてのキャリアは、ソウルのシンジョン小学校からKリーグ1のFCソウル傘下の五山中学でスタートした。中学3年生だった2023年にはJ2リーグのサガン鳥栖ユースチームに移籍し、日本でのプレーを選択した。
昨年、日本のサッカーメディア「サッカーダイジェスト」のインタビューで、彼は「強いチームでやりたくて日本に来ることを決めた」と語り、高いレベルでの挑戦を求めていることを明かしている。父親のキム・ジョンミン氏も息子の選択を支持しており、「息子は日本に帰化したわけではない。両国ともに彼の母国だ」と述べ、「サッカーはサッカーであり、欧州に行くのが夢だ」と応援のメッセージを送っている。FIFAの規定では、二重国籍者が年齢別代表でプレーした場合でも、将来的に国籍を変更してその国のA代表チームに選ばれることが可能であり、キム・ドユン選手がトップレベルの実力を維持し状況が変われば、韓国代表選手となる可能性も残されている。
U-17日本代表のキム・ドユン選手(谷大地)。日韓二重国籍を持つ次世代の星
李忠成選手との比較:20年の時を経て変わる視点
キム・ドユン選手の事例は、過去に日韓両国で活躍した李忠成選手(日本名り・ただなり)と多くの点で類似している。在日韓国人として日本で生まれ育ち、サッカーを学んだ李忠成選手は、2004年には朴成華監督が率いるU-19韓国代表に選出された経験を持つ。しかし、2006年に日本オリンピック代表に抜擢された後、2007年には日本名に改名し帰化を選択した。当時、彼はあるメディアのインタビューで「なぜ半チョッパリ(日本人に対する差別用語)と言われた時はつらかったし、ショックを受けた」と語り、「日本人より韓国人が自分側になってくれると思って韓国に来たが、坡州(パジュ)でのことは自分の世界観を変えた」と、国籍とアイデンティティに関する葛藤を吐露している。その後、李選手は2011年には日本成人代表チームの一員としてアジアカップに出場し、決勝戦で決勝ゴールを決める活躍を見せ、日本の4回目のアジアカップ優勝に貢献した。
約20年という時差を経て、日韓の境界に立つ2人の選手に対する社会の目は大きく変化した。国籍の問題や両国での人種差別を経験した李忠成選手とは異なり、現在では個人の選択が尊重されるべきだという声が多く聞かれるようになった。オンラインでは、「サッカー選手を希望する人がどの国で経歴を築こうとそれは個人の自由。その国が日本だからといって反日感情を前に出すのは個人的な感情だ」といった肯定的なコメントも寄せられている。
広がる日韓サッカーの実力差への懸念
一方で、韓国でサッカーを学んだ有能な選手が自身の成長のために日本のシステムを選択しなければならない現状を巡っては、日韓サッカーの実力差が広がった結果ではないかという懸念の声も出ている。最近、韓国代表は過去に例のない日本代表との3連敗を喫した。7月15日に竜仁(ヨンイン)ミルスタジアムで行われた2025東アジアサッカー連盟(EAFF)E-1チャンピオンシップ最終第3戦で日本代表に0-1で敗れた後、「両国の実力差が広がるようだ」という指摘に対し、韓国代表の洪明甫(ホン・ミョンボ)監督は率直な見解を述べた。「私も日本で長くやり、両国のサッカーを比較分析するが、幼い頃からのサッカー教育が違うのでその部分はやむを得ないという考えもある」とし、「日本は試合の勝敗とは関係なく、一貫性というものを1990年代から今まで持ってきた。我々は危険な状況であることを知りながら、一度でも(日本に)勝てばその結果に満足したようだ」と、育成システムと哲学の違いを指摘している。
イェンス・カストロップ選手の動向:韓国代表への期待
このような状況の中、最近ではドイツ人の父と韓国人の母の間に生まれたドイツ国籍のサッカー選手、イェンス・カストロップ選手(22)が、所属をドイツサッカー協会(DF)から大韓サッカー協会(KFA)に変更して注目を集めている。サイドバックやMFをこなすカストロップ選手は、ドイツのU-16、U-18、U-20代表に選出された経験を持ち、夏にはドイツ2部リーグのニュルンベルクから1部リーグのボルシア・メンヘングラードバッハに移籍するなど、その実力は折り紙つきだ。来月、米国遠征を控える韓国代表への抜擢が期待されており、9月7日午前6時には米ニュージャージー州スポーツイラストレイテッドスタジアムで米国代表と、10日午前10時には米テネシー州ジオディスパークでメキシコ代表と評価試合を行う予定だ。
結び
キム・ドユン選手のU-17日本代表への再選出は、現代サッカーにおける国籍やルーツを超えた個人の才能と選択の重要性を改めて示している。李忠成選手の時代と比較して、選手が自身のキャリアのために最適な環境を選択することへの理解が深まっている一方で、これは韓国サッカー界が直面する育成システムや競争力に関する課題をも浮き彫りにする。イェンス・カストロップ選手のような新たな才能の流入も期待される中、日韓両国のサッカーの発展と、それぞれの選手が最高の舞台で活躍できる機会が今後どのように展開していくか、引き続き注目される。
参考資料
https://news.yahoo.co.jp/articles/e8ede69eba6a69ac1eef0d43a074fff3e8f12185