もはや「禁輸」レベルの衝撃…トランプ氏が「関税25%」にこだわる狙いとは


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● 禁輸に匹敵するほどの 関税25%の破壊力

 米中摩擦の中で一方が他方に高関税を課す措置において、「25%」という数字を目にすることが多いだろう。2018年7月に米国から中国に対して発動された第1弾の追加関税、続く8月の第2弾、9月の第3弾と、中国から米国への輸入およそ2500億ドル(合計)に対して、すべて「25%」の関税が課せられた。報復措置として中国から米国に課せられた関税も同じく「25%」だった。

 なぜ「25%」なのか。この関税率は、企業がサプライチェーンを見直さざるをえないほどのコスト増につながる、まさに「禁輸」の一歩手前ともいえる強力な措置だからだ。

 例えば輸入自動車の調達価格は、CIF価格(卸売価格に、輸送運賃・保険料などを含めた価格)で、国内売価の80%程度となるケースも少なくない。この80%に対して、さらに25%の関税が課せられた場合、ちょうど国内売価と同額の調達コストになってしまう。この場合、関税分のコストを顧客に価格転嫁できなければ、企業の粗利が丸ごと消し飛ぶことになるのだ。

 私が過去に出版した書籍(『すぐ実践!利益がぐんぐん伸びる稼げるFTA大全』)では、表紙で「関税3%は法人税30%に相当」というコピーを掲げたほど、関税がビジネスにもたらすインパクトは大きい。

● サプライチェーン途絶で 資金のある会社も破綻

 基本的に、地政学リスクへの対応には「1カ月しか猶予がない」と肝に銘じておく必要がある。もちろん、海外拠点の移転などには数年単位の準備が必要になるし、高品質な調達先を新たに見つけるのにも時間を要する。だからこそ、いざ有事になる前に、その準備をあらかじめ進めておかなければならない。

 「うちの会社は1カ月ぐらい入金がなくても潰れない」と高をくくるのは危険だ。運転資金は十分にあったとしても、商売に必要な商品を調達するサプライチェーンが途絶えてしまえば、会社は操業停止状態に陥る。顧客は、地政学リスク対応を万全にしていた他社に流れていくだろう。

 日本企業の棚卸資産回転期間は平均1.08カ月(2022年度の全産業・全規模平均)とされる。店舗であれば、約1カ月で商品在庫がすべて入れ替わる計算だ。適切なタイミングで商品が入荷できなければ、早くも翌月には顧客に提供できる在庫がなくなってしまう。特定の顧客にのみ納品している製造業であれば、欠品によるビジネスリスクはさらに大きい。契約通りに納品できなければ、違約金が発生することもあり得る。

 地震や洪水などの自然災害と同じく、地政学リスクの顕在化による「サプライチェーン途絶」は、あっという間にビジネスに致命的なインパクトをもたらす。2022〜23年にかけて世界規模で発生した半導体不足では、多くの企業が倒産の憂き目に遭った。苦しんだのはエレクトロニクス企業だけではない。例えば、家具やじゅうたんを製造している中小企業が、生産に必要な製造機械の部品が届かず工場が稼働停止となり、経営難に陥ったケースもあった。



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