【ワシントン=池田慶太、ニューヨーク=山本貴徳】米国のトランプ大統領とカナダのカーニー首相は6日、ワシントンのホワイトハウスで初めて対面で会談し、経済と安全保障に関して協力の糸口を探る姿勢を示した。ただ、トランプ氏はカナダの米国への「併合」に改めて言及し、カーニー氏は強く反論した。
トランプ氏は会談冒頭、「カナダは米国の51番目の州になるべきだ」との持論について記者団に問われ、「カナダ国民にとっては大幅な減税になり、軍事力も無料で提供される。多くの恩恵がある」と主張した。
これに対し、カーニー氏は「不動産の世界では、決して売りに出されない場所がある。今われわれがいる場所もそうだ」と語りかけ、「カナダは売り物ではない。今後も決して売ることはない」と反論した。だが、さらにトランプ氏は「絶対にないとは言い切れない」と言い返し、会談の空気は一時、緊張した。
関税措置を巡っても議論は平行線をたどった。トランプ政権は3月、不法移民や合成麻薬への対策が不十分だとして、カナダからの輸入品に25%の関税を課した。カナダも米国のビールやオレンジジュースなどに関税をかけて対抗している。
トランプ氏は、関税を撤回する考えはないと強調した。「私たちはカナダ産の車を必要としていない」とも述べ、自動車メーカーに米国での生産を促す考えを改めて示した。カーニー氏は「カナダから出荷される車の半分は米国製部品で構成されている」と述べ、両国の自動車産業は深く結びついていると指摘した。
ただ、両首脳は協議継続への前向きな姿勢も見せた。トランプ氏は「何があってもカナダとは友人であり続ける」と述べ、カーニー氏を「非常に尊敬している」と称賛した。カーニー氏もトランプ氏について、「変革をもたらす大統領だ」と評価した。
カナダ首相府によると、両首脳は今後、数週間にわたり、経済と安全保障に関する新たな関係構築をめぐって包括的な協議を続けることで一致した。6月にカナダ西部カナナスキスで開かれる先進7か国首脳会議(G7サミット)での再会も確認した。