成果を出さない「給料泥棒」に頭を抱える企業が続出しているワケ


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● 6割以上の日本企業が ジョブ型人事に前向き?

 日立製作所、KDDI、富士通、資生堂など、名だたる大企業で「ジョブ型人事制度」(編集部注/職務内容とスキル、経験、資格などを限定して従業員を採用する、欧米では一般的な雇用形態)や「職務給」の導入が相次いでいます。

 現在、ジョブ型人事制度を導入済みだったり導入検討中だったりする企業はおよそ6割です。

 パーソル総合研究所の「ジョブ型人事制度に関する企業実態調査」(2021年)ではジョブ型人事制度導入企業が18.0%で、導入検討中の企業39.6%と合わせると57.6%がジョブ型に前向きです。

 日本能率協会の「当面する企業経営課題に関する調査―組織・人事編2023―」でも、ジョブ型の人事・評価・処遇制度を何らかの形で導入している企業が2割以上、導入検討中の企業は4割台、合計すると6割を超えます。

 また、職務給の導入状況を見ると、労務行政研究所の「基本給の昇降給ルールと賞与制度の最新実態」(2023年)によると、管理職層では職務給または役割給を導入している企業が約70%、一般社員層でも約50%です。

 「ジョブ型人事制度ってなに?」「職務給ってなに?」という方のために、まず、基本のところを簡単に説明しておきます。

 一方、「仕事」基準は、「人事課長は7等級で月給70万円」というように、誰が担当するかとは関係なく、「仕事」そのものに応じて等級や給与を決めるやり方です。職務等級や職務給、役職手当などは「仕事」基準です。職務を大括りで捉える役割等級や役割給も同様です。

● ジョブ型や職務給の導入の背景に 日本企業ならではの事情が

 なぜ今、「ジョブ型人事制度」や「職務給」に関心を持つ企業が多いのでしょうか。

 少し人事に詳しい人に尋ねると、「ジョブ型や職務給って、欧米の仕組みですよね。人事もグローバルスタンダードに合わせなければ通用しない時代だからじゃないんですか」という答えが返ってきそうです。

 確かに、報道で取り上げられる企業事例のほとんどは大規模にグローバル展開を行っています。その意味では、この回答も外れではないのですが、日本におけるジョブ型や職務給の導入はグローバル企業に限った傾向ではありません。

 むしろ、日本企業の固有事情がジョブ型や職務給の導入を後押ししている面があります。ジョブ型や職務給が注目される背景は、「人件費の合理性」向上に対するニーズと「タレントマネジメント」推進上のニーズに大別できます【図表9】。

 企業がジョブ型人事制度の導入を進めている主な目的の1つは、「人件費の合理性」を高めることです。

 パーソル総合研究所の「ジョブ型人事制度に関する企業実態調査」(2021年)ではジョブ型人事制度の導入目的(複数回答)として、「従業員の成果に合わせて処遇の差をつけたい」が65.7%と最多で、「戦略的な人材ポジションの採用力を強化したい」(55.9%)、「従業員のスキル.能力の専門性を高めたい」(52.1%)がそれに続きます。



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