ロシア各地で7日にかけ、ウクライナによる大規模なドローン(無人機)攻撃があった。当局によると、航空便の欠航や遅延が相次ぎ、少なくとも計6万人が空港で足止めされた。
ロシア国防省は、過去24時間でウクライナのドローンを524機破壊したと発表した。これが正しければ過去最多となる。死傷者は報告されていない。
モスクワのセルゲイ・ソビャーニン市長は、6日夜以降、ドローン19機が同市近郊で撃墜されたとした。
ロシア旅行業者協会(ATOR)によると、モスクワ、サンクトペテルブルク、ソチ、その他の数都市で6日夜以降、計350便が影響を受けた。
モスクワの3空港(ヴヌーコヴォ、シェレメチェヴォ、ドモジェドヴォ)だけで計110便が欠航となったという。
ロシア第2の都市サンクトペテルブルクでは、55便が欠航または遅延した。同市のプルコヴォ空港の映像では、航空機が滑走路で列を作って動けなくなっていた。乗客は出発まで何時間も待ったとされる。
ソチ、カザン、キーロフ、ニジネカムスクなどの空港でも、フライトの乱れが報告された。
■ロシアが宣言した停戦を前に
ウクライナによる攻撃は、ロシアが一方的に宣言した3日間の停戦が7日夜に始まるのを前に実施された。ロシアは9日にモスクワで、第2次世界大戦の戦勝記念パレードを予定している。
ウクライナはこの停戦の呼びかけを「芝居」と呼び繰り返し拒絶。改めて、無条件の30日間の停戦を主張している。ウクライナ案は欧米も支持している。
ロシアは停戦合意の前提として、厳しい条件を提示している。これについては、ウクライナやヨーロッパの多くの政治家は、ロシアが戦闘を長引かせ、最終的にウクライナを降伏させようとするものだとしている。
アメリカのJ・D・ヴァンス副大統領は7日、「(ロシアは)多くを求めすぎていると我々は考えている」と述べ、ロシアに対する姿勢を硬化。「ロシア人とウクライナ人が互いに話し合いを始めることが非常に重要だ」と付け加えた。
ヴァンス氏はさらに、ヨーロッパに対しては口調を大幅に軟化させ、「アメリカとヨーロッパは同じチームにいると、私はまだ強く考えている」と述べた。
■各国首脳がモスクワ入り
ロシアの航空便の乱れは、9日に「赤の広場」で行われる軍事パレードに出席する各国首脳らがモスクワ入りするタイミングで引き起こされた。
7日には、中国の習近平国家主席がモスクワに到着。現地報道によると、セルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領が乗った航空機は、ロシア各地でのドローン攻撃のため、アゼルバイジャンのバクーに緊急着陸してからモスクワに着いた。
欧州連合(EU)加盟国の首脳で唯一出席するとされるスロヴァキアのロベルト・フィツォ首相は、エストニアに領空通過を拒まれたため、予定に大幅な影響が出たと不満を述べた。
一方、エストニア政府は、モスクワでのパレードを支援するつもりは一切ないと表明。欧州諸国関係者には、ロシアの「プロパガンダ行事」への参加を控えるよう呼び掛けていた。
ロシアは、軍事パレードに合わせ、各国首脳ら27人がモスクワを訪れるとしている。ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ大統領とヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領はすでに到着している。
■キーウ攻撃で親子死亡
一方、ウクライナは、ロシアによる夜間のドローンとミサイルでの攻撃で、キーウで女性とその息子が殺害されたとしている。
ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、首都が攻撃されたのをふまえ、「ロシアへの圧力の大幅な強化」を呼びかけた。
ゼレンスキー氏は今月に入り、軍事パレード出席のためモスクワへ移動する人の安全は保証できないと警告している。
同氏はまた、ロシアが戦勝記念日に、ウクライナの信用を損なうことを目的とした挑発行為に出る可能性があると示唆している。
(英語記事 Russia says 60,000 air passengers stranded after Ukrainian drone attacks)
(c) BBC News