【モスクワ=東慶一郎】中国の習近平(シージンピン)国家主席は8日、80年の節目となる旧ソ連の対独戦勝記念日(9日)の式典出席のために訪問したモスクワで、ロシアのプーチン大統領と会談した。両首脳はウクライナ情勢や米国のトランプ政権による対中関税引き上げなどを踏まえ、両国の協力を強化する方針を確認した。歴史認識で共闘する姿勢も打ち出した。
会談後に発表された共同声明には、ウクライナ侵略についてロシアの主張に沿った「根本原因の除去」との文言が記された。台湾問題に関し、中国が主張する「一つの中国」原則の支持も盛り込まれた。
旧ソ連と中国が80年前にナチス・ドイツと日本という「ファシズム」と「軍国主義」に勝利し、「数え切れない犠牲を払い、偉大な歴史的偉業を成し遂げた」と主張した。日本に対しては「靖国神社や歴史上の出来事に関する言動に慎重を期し、軍国主義から完全に距離を置くべきだ」と要求した。ロシアが中国の主張に同調したとみられる。
プーチン氏は会談後の記者発表で、自動車や家電などの中国製品がロシア市場で存在感を増し、「中露関係は史上最高レベルに達した」と強調した。「中国の友人」と共に、「現代のネオナチズムと軍国主義に対抗する」とも語った。プーチン政権はウクライナ侵略を「ネオナチ」との戦いだと主張している。
一方、習氏は会談冒頭、トランプ政権を念頭に「一国主義や強権的ないじめ行為に直面する中、中露は共に経済のグローバル化を推進する」と語った。
プーチン氏は会談で、中国で開かれる「抗日戦争勝利記念日」(9月3日)の式典や上海協力機構(SCO)首脳会議への出席を約束した。習氏の訪露は2024年10月以来。9日にはモスクワ中心部の赤の広場で開かれる軍事パレードに出席する。