「先生、ほかにもっと効く治療はありませんか?」
抗がん剤の副作用でフラフラになっていたある日、ふと心の奥から湧き出した声だった。頭では「保険診療こそが一番確実」と分かっていても、現実の身体は別の言葉を吐きたがる。背中の痛み、手足のしびれ、食欲のなさ、気力の減退……そんな中で、「このままでは持たない殺される」と思ってしまうのだ。
標準治療は信頼できる。だが、100人いれば100通りの副作用があり、100通りの不安がある。そんな隙間に忍び込んでくるのが、“がん治療ビジネス”という名の山師の詐欺師たちだ。医師免許を持たない者、謎のサプリ屋、霊能者、怪しいクリニック紹介業者……筆者はレアメタルの世界で「本物」と「偽物」を見分けてきたが、この分野でも目利きが必要だ。
ホワイト、グレー、ダーク、ブラック
がん治療の世界は、4つの色に分けて考えるとわかりやすい。
ホワイト療法は、言うまでもなく保険診療。私が今受けているゼロックス+バハシズマブ療法もこれに入る。副作用は多少キツいが、臨床試験で裏付けられた王道だ。
グレー療法は、自由診療だが、大学病院や一部の先端クリニックで行われる免疫療法や遺伝子療法など、科学的根拠がある程度整ってきているもの。高額だが、誠実な医師も多い。例えば、筆者が信頼している友人から水素吸入機をレンタルで紹介されて使ってみた。エビデンスは不足している標準治療との合わせ技だが、プラセボ効果があると思っている。念のためにM主治医に相談したら「無害だから患者が気に入ったら良いでしょう」と笑って応えられた。
問題はここからだ。レアメタルの山師の筆者でもその気にさせられる、がん治療の山師の詐欺師がウジャウジャいるから油断も隙もあったもんじゃない。
ダーク療法とは、「なんとなく効きそう」に見えるが、科学的な裏付けがほぼない。高濃度ビタミンC点滴、オゾン療法など。私の知人も「がんが治る磁気ブレスレット」なる物を30万円で買っていたが、2カ月後には病状が進行していた。
そして、ブラック療法。これはもはや完全なる詐欺だ。患者の弱みにつけ込む商売をする連中がいる。以下に、実際に私が目にした、あるいは聞き取った「がん詐欺5選」を記しておく。