新教皇「レオ14世」親交ある日本人神父が明かす「気さく素顔」昼からワイン、箸で和食、「マサキ」と下の名前で呼びかけ


【画像あり】サンピエトロ大聖堂のバルコニーに姿を見せるレオ14世

 5月9日(日本時間)、約14億人のカトリック信者のトップであるローマ教皇に、ロバート・フランシス・プレボスト枢機卿(69)が選出された。「レオ14世」を名乗るプレボスト枢機卿は、米イリノイ州シカゴ生まれ。267代目で初めてとなるアメリカ人だ。

 キリスト信仰に関する著書のあるノンフィクション作家の広野真嗣氏は、新教皇をこう評する。

「レオ14世は布教活動の前線として、約20年にわたって南米のペルーに派遣されていました。その後は、フランシスコ前教皇のもとで、司教の選出を担当するバチカン司教省長官にも就いています。いわば現場も中央官庁も、両方知っているバランスが取れた神父だといえます」

 だが、今回の教皇選挙は“近年でもっとも予測不可能”といわれ、有力候補としてイタリアやフィリピン出身の枢機卿の名前が報じられてきた。なぜ、レオ14世は“どんでん返し”で選出されたのか。

「ひとつは、レオ14世は教会内の法律『教会法』の学位を持つ理論家であることが挙げられます。フランシスコはどちらかといえばリベラルで、教義をめぐる軋轢にも寛容でした。その点を“悪魔のしもべ”と糾弾する過激な保守派もいて、教会が分断しかねない状況がありました。それを整理でき、中道路線を歩めるのがレオ14世だとされたのではないでしょうか」(同前)

 折しも、全世界で映画『教皇選挙』が公開され、日本でも大ヒットを記録していることはご存じのとおり。配給会社によると、5月7日時点の動員累計は約51万9000人に上る。映画評論家の伊藤さとり氏が語る。

「作品自体、群像劇としても最上級のサスペンスだと思います。最初に日本で映画が話題になった理由のひとつは、原題の『コンクラーベ』を変に凝らずに直訳し、『教皇選挙』という邦題にしたことでしょう。バチカンという閉鎖空間の“パンドラの箱”が開かれるミステリーだろうなと、カトリックに馴染みのない日本人も想像を掻き立てられるからです。ただ、現実に教皇選挙がおこなわれなかったら、映画はここまで話題にはならなかったでしょうね」

 そんな話題作に飛びついたのが、ほかならぬ新教皇だ。兄が米メディアに対し、レオ14世がコンクラーベ直前に『教皇選挙』を鑑賞していたことを明かしたのだ。一方、地元シカゴのメディアも同じ兄に取材し、レオ14世がシカゴ・ホワイトソックスのファンであることを報じている。

 そんな“庶民派”の一面を知る人物が、カトリック城山教会(長崎県)の今田昌樹神父(70)。城山教会は、レオ14世が属する聖アウグスチノ修道会の日本本部であり、2人は四半世紀近くのつきあいがあるのだ。

「9日の朝5時40分に、知り合いから『大変なことになっている』とメールが届きました。それでプレボストさんが新教皇に選ばれたことを知り、『嘘だろ? 本当になったんだ』と驚きました。それから、『おめでとう』という電話が続々とかかってきたのです」(今田神父)

 2人が初めて会ったのは2001年。レオ14世が、聖アウグスチノ修道会の総長に選ばれたときのことだ。

「そのときの総会で、初めてお会いしました。プレボストさんは、以来12年間にわたって総長を務められ、2008年に長崎で徳川時代の殉教者に関する式典をおこなった際に来日されました。世界中から3万人を超える信徒が集まり、188人の日本の殉教者が福者(聖人になる前の段階)になるという壮大な式です。式の翌日には、廃校になった小学校で感謝のミサをおこなったり、福者になった一人が隠れて布教活動をおこなっていた洞窟に行ったりしました」(同前)

 その後も、今田神父とレオ14世の親交は続いた。

「プレボストさんはとても気さくな方で、私のことは『マサキ』と、下の名前で呼んでくれます。私が体調を崩したときは『マサキ、体は大丈夫か』と心配してくれたこともありました。信徒の前でおこなう説教も、プレボストさんはけっして長々と話すことはありません。非常に的を射た話を、短く話す方ですよ」

 式の後は、食事を共にした。

「修道院の食堂で、信者の皆さんと一緒にプレボストさんも食事をしました。和食も、お箸を使って食べていらっしゃいました。食事にはワインが出されます。総会をおこなったときもそうですが、カトリックでは食事にワインはつき物なんですよ。お昼を食べるときもテーブルには赤と白のワインが置かれていますし、プレボストさんも召し上がりますよ。その日の夜も、もちろんワインがありました。プレボストさんは別に大酒飲みではないんですけどね(笑)」(同前)

 親しみやすい一面を見せるレオ14世が最高指導者になったことに、今田神父はあらためてこう語った。

「プレボストさんも、じつは教皇の“本命の一人”として名前が挙がっていたんです。特にアメリカのメディアは『優れた人物で、けっして派手ではないがバランス感覚がある人だ』と評していましたし、私もそう思っていました。ただ、私たちからすると教皇は特別な人なのですが、その特別な人に身近な人がなった。あらためて、すごい人は身近にいるんだなと思いました」

 今、カトリック教会では未成年者への性的虐待問題や、マネーロンダリング疑惑も渦巻いている。“庶民派”教皇は、難題にどう対処するのだろうか。

写真・共同通信



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