「正社員になるシステムない」「景気に人生を左右された」 就職氷河期世代が苦難激白


【ひと目でわかる】就職氷河期世代はどのくらい冷遇されているのか

■「これを逃したらチャンスはない」帰郷し正社員目指す

新潟県糸魚川市の男性(45)は昨年、27年間暮らした東京から帰郷し、地元の工場で働き始めた。現在は契約社員。正社員を目指す。「3年働けば道が開く。これを逃したらチャンスはない」

地元の高校を卒業後に上京。専門学校を中退して在学中から働いていた新聞販売店の正社員になったが、体調が悪化して退職。以来、約20年間、警備会社に契約社員として勤務した。正社員になりたかったが、「そもそも正社員になれるシステムがなかった」。

40代を迎えると「安定した仕事をしたい」と将来への不安も芽生えた。事務系を中心に仕事を探したが、約20社から不採用を告げられた。「年齢ではじかれてしまう。40代になると、能力さえ見てくれなくなる」。実家に暮らす両親と弟の体調が悪化したため帰郷、現在の職場に勤務する。

「働きたい分野があっても、採用されるのは経験者か若い人で職歴を積めない」。国や自治体などの対策に「何をやっているか分からない。学歴などではなく、純粋な能力で採用される仕組みを作ってほしい」と望む。

■周囲には何度面接を受けてもダメだった人が

新卒一括採用・終身雇用から、「フリーランス」へ―。氷河期世代は新しいワークスタイルの浸透を一身に浴びてきた世代でもある。「今さら正社員になるメリットはない」。契約社員として通信関連会社に勤務する川崎市の男性(47)は言い切る。

専門学校を卒業後、誘われてITエンジニアの道へ。最初の入社先では正社員という選択肢もあったが、金銭的待遇のいい契約社員になった。

会社の移籍をはさみながら、現在もIT分野で年俸制の契約社員として働く。「人に使われるのが好きじゃない。正社員にはなろうと思えばなれるが、会社の言うことを聞かなければいけないじゃないですか。契約社員なら自分で判断できるし、業務の拒否権もある」。年金もあてにせず投資で老後に備える。

選択の根底には、有効な氷河期世代対策を講じてこなかった政治への不信感がある。「僕らはITバブルが崩壊して、元に戻ったらリーマンショックがあるなどして、景気に人生を左右されてきた」。何度面接を受けても内定を得られなかった知人が何人もいた。「子育て世代や高齢者には対策が進められてきたが、氷河期世代は恩恵を受けられなかった」。男性は語気を強めた。(内田優作、永礼もも香)



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