高校時代の同級生がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のX(旧ツイッター)に執拗に書き込んだヘイト投稿により差別され名誉が傷つけられたとして、東京・杉並区の在日コリアン3世である金正則さん(70歳)がヘイト投稿をした福岡市在住の男性に損害賠償を求めた訴訟(※)で東京地裁(衣斐瑞穂裁判官)は3月18日、金さんの訴えを認め、請求通り110万円の賠償をこの男性に命じる判決を下した。
金さんは、この男性による15件の投稿を「差別的言動」として訴えた。一方、被告の男性側は「不適切な投稿はあったとしても、本件各投稿を『差別的言動』とまでは評価することはできない」などと反論していた。
判決は「各投稿はいずれも原告に対する不法行為を構成する」と認定したうえで、①これらの投稿が約2年10カ月間で断続的に行なわれ、その回数が相当程度に及んでいる、②ヘイトスピーチ解消法第2条(左欄参照)の「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」にあたるものが15件中9件あり、その内容が悪質であると評価せざるを得ない――との判断を示し、請求通りの損害賠償額を認めた。
では「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、具体的にどのようなものか。その9件すべてをここで示す紙幅はないが、たとえば2021年6月12日の投稿は、次のような内容である。
「在日の金くん。コメントをお願いします。朝鮮人は明らかに性犯罪が多いですよね。何故ですか?知らんとは言わせない。理由を述べよ」
この投稿について判決は「韓国又は北朝鮮出身者の犯罪性向がそれ以外の者と比較して高いなどと指摘して、韓国又は北朝鮮出身者一般に対する否定的評価ないし嫌悪感を表明するとともに、原告にも同様の傾向がある旨を示唆して原告を非難するものである。(中略)本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動するものであると認められる」ことからヘイトスピーチ解消法2条の「不当な差別的言動」にあたると認定した。