ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は13日、首都キーウで会見し、トルコ・アンカラで15日にレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と会談した後、イスタンブールでロシアのウラジーミル・プーチン大統領と直接会談する用意があると述べた。ロシア側にプーチン氏本人の出席を迫るかたちになった。
キーウで急遽(きゅうきょ)開かれた記者説明でゼレンスキー氏は、「(プーチン氏との直接)会談が行われるよう、我々はあらゆる手だてを尽くす」と述べた。
ゼレンスキー氏は11日、プーチン氏と15日にトルコで自ら会談し、戦争を終わらせることについて話し合う用意があるとソーシャルメディア「X」に投稿。これに先立ちプーチン氏が11日未明、トルコで両国の直接協議を行うよう提案していた。
ロシア側は、イスタンブールに誰が向かうのか明言しておらず、「(プーチン氏が)必要だと判断し次第」発表するつもりだとしている。
プーチン氏は当初、トルコの最大都市イスタンブールで、ロシアとウクライナが「前提条件なしに」直接交渉を行うことを求めていた。この提案に対し、ゼレンスキー氏は自分がトルコへ向かい、プーチン氏が来るのを待つと、ソーシャルメディアに投稿した。
アメリカも高官級の代表団を派遣するとみられている。
プーチン氏とゼレンスキー氏の直接会談は、2019年12月にフランス・パリで対面して以来行われていない。
ロシアとウクライナが最後に直接交渉をしたのは、ロシアによる全面侵攻が始まって数週間後の2022年3月で、場所はトルコ・イスタンブールだった。
■ゼレンスキー氏、ロシアに対応迫る
ゼレンスキー氏はキーウでの記者説明で、15日にトルコを訪問する予定だと認めた。これによって、ロシアに対応を迫ったかたちになっている
ゼレンスキー氏はイスタンブールでプーチンと対面する用意はあるが、30日間の停戦を確保することが優先事項だとしている。10日に欧州主要国と共にロシアに要求した30日間の停戦については、アメリカを含むウクライナの全ての同盟国が同意していると強調した。
プーチン氏が11日未明にトルコでの直接交渉を提案したのは、ウクライナ政府を不利な立場に置き、ウクライナに「反応しない」あるいは「ウクライナにとって後ろ向きな反応」ができるようにするためだったと、ゼレンスキー氏は考えている。
欧州主要国とウクライナによる10日の即時停戦要求に対して、クレムリン(ロシア大統領府)はプーチン氏の記者発表に先立ち、自分たちに圧力をかけるのは「無駄」で最後通告には応じないと警告していた。
ロシアはこれまで、停戦受け入れよりも、ロシアがこの戦争の「根本原因」とみなすものに対処するための、長期的な解決策を重視してきた。プーチン氏の言う戦争の根本原因は、ロシアの影響下にない主権国家であろうとするウクライナの意向と結びついているため、ロシアが提示する一連の厳しい前提条件を、ウクライナ政府は全面侵攻以前から繰り返し拒否してきた。
こうした中、中東を訪問中のドナルド・トランプ米大統領は、「何かが起こりそうなら」自らイスタンブールへ向かう可能性があることを示唆した。
今のところ、その可能性は低そうだが、未確認の報道によると、アメリカのスティーヴ・ウィトコフ中東特使とキース・ケロッグ・ウクライナ担当特使が15日にイスタンブールに滞在する予定だという。
■プーチン氏は直接会談に応じるのか
一方でクレムリンは、プーチン氏が自らイスタンブールへ向かうのではないかとの憶測を鎮めようとしている。
「ロシアは15日に予定されている交渉の準備を続けている。今言えるのはそれだけだ」と、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は述べた。
セルゲイ・リャブコフ外務次官は13日、ロシア政府は「現地の実情」を考慮し、「責任をもって」会談を行う用意があると述べた。「現地の実情」とは暗に、2022年の全面侵攻開始後にロシアが部分占領したウクライナ東部と南部の4州を指す。
リャブコフ次官はまた、侵攻前にロシア政府が要求していた和解の実現についても繰り返し述べた。ウクライナと西側の同盟国はこれを、ウクライナ政府に事実上の降伏を求めるのと同然の最後通告とみなしている。
ウクライナに合意を守る能力があるのか疑問だとも、リャブコフ氏は述べた。
欧州連合(EU)のカヤ・カラス外務・安全保障政策上級代表は、ゼレンスキー氏とプーチン氏が腰を据えて話をするのは良いことだとしつつ、「プーチン氏があえてそうするとは思えない」と付け加えた。
ゼレンスキー氏もまた、プーチン氏は自分に会うのを「恐れている」と非難した。ウクライナのアンドリー・イェルマーク大統領首席補佐官は、プーチン氏がイスタンブール行きを拒めば、プーチン氏に戦争を終わらせる気がないことを示す「最終的なシグナル」になるだろうと述べた。
10日にキーウを訪れ、ロシアに30日間の停戦を要求したイギリスやドイツ、ポーランド、フランスの首脳は、ロシアがこれを受け入れなければ直ちに制裁を科すと警告。EUは現在、対ロシア制裁の第17弾を検討している。
(英語記事 Zelensky vows to ‘do everything’ to ensure direct talks with Putin in Turkey)
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