古代の戦士も実践!ポール・ウェイドが解き明かす「腕立て伏せ」の真実と究極の効能

日本で定着した「自重トレーニング」。そのきっかけは、2017年に邦訳された『プリズナートレーニング 圧倒的な強さを手に入れる究極の自重筋トレ』(CEメディアハウス)でした。元囚人でキャリステニクス研究の第一人者、ポール・ウェイド氏が語る筋肉論は、多くの人々に影響を与えています。本記事では、ウェイド氏の著書から「プッシュアップ(腕立て伏せ)」に焦点を当て、その真の価値と効能、そして完璧なフォームについて解説します。

伝説の「元囚人コーチ」が提唱する究極の自重筋トレ、プッシュアップのイメージ伝説の「元囚人コーチ」が提唱する究極の自重筋トレ、プッシュアップのイメージ

上半身のための究極エクササイズ

上半身の筋力、筋肉、腱を強化する究極のエクササイズ、それがプッシュアップです。腹部と下半身を協働させながら、上半身の「押す」筋肉を効率的に鍛え上げます。ベンチプレスが推奨されがちですが、ウェイド氏はそれは誤りだと指摘。ベンチプレスは上半身を人工的に分離し、短期間でも関節に炎症を起こし、ローテーターカフを損ねるリスクを高めます。

一方、プッシュアップは関節へのストレスを抑え、ジム内だけでなく現実世界で使える「機能的な筋力」を生み出します。世界の軍事キャンプや運動系の学校でプッシュアップがNo.1のエクササイズである理由はここにあります。最初の戦士が強靭さを手に入れるためにプッシュアップをやって以来、その重要性は変わっていません。

不幸にも、ベンチプレス好きが増え、プッシュアップは単なるレップス数を重ねる持久運動と化しています。これは恥ずべきこと。本物のプッシュアップを漸進的にマスターする方法を知れば、ボディビルダーやパワーリフターをも超える圧倒的な上半身の強さを開発できるとウェイド氏は語ります。肩も強くなるでしょう。この章で、その全てを教えましょう。

プッシュアップがもたらす驚異的な効能

異なるフォームのプッシュアップは、上半身にある異なる筋肉に働きかけ、「押す筋肉」のネットワークを開発します。ターゲットは、大胸筋、三角筋前部、小胸筋、そこに上腕三頭筋の3つのヘッドと前腕の主要筋肉が加わります。これら重要な筋肉を理想的な動作域内で鍛えるトレーニングとなります。

正しいフォームで行うプッシュアップは、他の多くの筋肉にアイソメトリック的なワークを施します。頭からつま先までを固定すると、全身が静的に拘束されます。これにより、広背筋、深層胸筋、脊椎筋、腹筋と腸腰筋、股関節まわり、臀筋、大腿四頭筋、前脛骨筋、足とつま先がアイソメトリック的に鍛えられます。

少しずつ高度化させていくプッシュアップは、関節と腱を強く健全なものにします。指、手首、前腕、肘を支える小さいながらも活動的な深層筋や深部組織も強化し、手根管症候群、テニス肘やゴルフ肘、痛みや腫れが起こりにくくなります。

不安定な状態で行うプッシュアップ(アンイーブン・プッシュアップなど)は、アスリートが傷めやすいローテーターカフを強化します。血流増加は、関節内に溜まった老廃物を除去し、癒着を防ぎ、古い瘢痕組織をほぐす効果も。ウエイトリフターがルーチンにプッシュアップを加えると、ウエイトを挙げるだけの人よりも関節障害を少なくできるのです。

完璧な結果を生むプッシュアップの技術

「正しい」プッシュアップ技術を知るために、ポール・ウェイド氏はマーシャルアーツから軍のマニュアルまで何百ページも読んだと言います。プッシュアップに関する記述が少しずつ異なるからです。

体型は一人ひとり異なります。手足の長さ、筋力、体脂肪率、ケガの歴史などが微妙な影を落とすため、「完璧な」テクニックも個人ごとに違うのが現実です。そのため、ここではプッシュアップを行う上での「一般的なルールとアイデア」を伝えます。

  • 肘の角度や手の位置を奇妙なものにしない。
  • 体幹、股関節、脚を一直線に保つ。 (お尻を突き出すのは体幹が弱く、体を固定できないため)
  • 両脚を揃える。 (広げると体幹安定の必要がなくなり、簡単になる)
  • 動作のトップでは腕をまっすぐにするが、肘を伸ばしすぎない。 (関節をロックせず、肘を少し曲げた状態を保つ)
  • 呼吸はスムーズに。 (下げる時に吸い、上げる時に吐く。苦しい場合は呼吸を追加)

スピードとパワー:プッシュアップの進化

できる限りの速さでプッシュアップするよう勧める人も多く、昔のクラッピング・プッシュアップを現代的にしたプライオメトリック・プッシュアップを好む人もいます。空中で1~3回拍手できるよう爆発的に跳ね上げるタイプで、スピードが命です。

素早くプッシュアップできるようになることには利点があります。「伸張反射」と呼ばれるメカニズムを通じ、大きなパワーを瞬発的につくり出せるからです。コンテストで競うプッシュアップは時間制限つきが多いため、より速く上下できることが勝利につながります。

初心者レベルでなくなり、関節や筋肉がプッシュアップに適応し始めたら、速いプッシュアップを加えてもいいでしょう。

結びに

「プッシュアップ(腕立て伏せ)」は、ポール・ウェイド氏が説くように、上半身全体の機能的な強さと健康を築く究極のエクササイズです。ベンチプレスと比較しても、関節への優しさ、全身の連動性、現実世界で役立つ応用力において、その価値は際立っています。

本稿で解説したプッシュアップの多様な効能と「完璧な技術」の原則を理解し実践することで、体幹から腕、肩、全身に至るまで、驚くほど強靭で健康な肉体を手に入れられるでしょう。この人類最古の、そして最も効果的な筋力トレーニングを日々のルーティンに取り入れ、その真価をぜひ体験してください。

参考文献

  • ポール・ウェイド著『プリズナートレーニング 圧倒的な強さを手に入れる究極の自重筋トレ』(CEメディアハウス)