1都1道15県に傘下組織を従え、約1600人の構成員を擁する暴力団「稲川会」。その総裁・清田次郎が4月21日に84歳で死去し、5月15日に横浜市内の稲川会館で「会葬」が行われた。
【貴重写真】稲川会総裁・清田次郎の葬儀に出席するために新横浜駅に新幹線で到着した6代目山口組の司忍組長。他にも暴力団界の大物が勢ぞろい
葬儀には国内最大の勢力を誇る6代目山口組組長の司忍、若頭に就任したばかりの竹内照明ら最高幹部が参列したほか、住吉会からも会長の小川修司らが弔問に訪れ、そうそうたる顔ぶれが並んだ。
祭壇にも全国の主要暴力団の代表者からの名札が並び、供花とともに暴力団業界の「オールスター」といっても過言ではない葬儀となった。
稲川会の会葬についての書面が暴力団関係者の間を駆け巡った
「『稲川会々葬』が決まりましたので通知致します」
5月上旬、このような見出しの書面が暴力団関係者の間で回覧された。書面には「五月十五日(木) 稲川会館 集合、午前九時、厳守」とあり、続いて近隣への迷惑とならないよう厳守事項が記載され、最後に「稲川会本部発 令和七年四月三十日(水)発信」と締めくくられている。
稲川会は東京都公安委員会によって指定暴力団に指定されており、主たる事務所は東京・六本木となっているが、実際は多くの拠点が神奈川県内の主に横浜市や川崎市などに集中している。書面にある「稲川会館」とは横浜市内にある施設で、重要行事などで使われている。
この書面は暴力団犯罪を専門に捜査する警察当局のマル暴刑事たちも時を置かずに入手。かつて暴力団幹部の葬儀では、対立組織の組員が紛れ込んで拳銃を発砲し、死傷者が出る事件が発生したことがあった。そのため警察当局は、不測の事態の発生に備えて警戒体制に入った。
暴力団社会では、今回のような葬儀や組織のトップである組長が入れ替わった際の襲名披露などは「義理事」と呼ばれ、欠かすことができない最重要儀式とされている。
警察当局の捜査幹部は、「通知を受けているにもかかわらず無断で欠席した場合は、敵対行為とみなす組織もある。通常はこのような無謀なことをする者はいないが」とその重要性を解説する。
稲川会の組織としての会葬に先立って、4月26日には清田の出身母体である稲川会山川一家と、家族による葬儀が川崎市内の山川一家本部事務所で行われていた。こちらの喪主は清田の妻、施主は稲川会の現会長・内堀和也が務めた。
首都圏に拠点を構える指定暴力団の幹部が、清田の2度の葬儀についてこう解説する。
「4月の家族葬には稲川会の子分たちが集まったのだろう。この時の香典は葬儀で必要になった経費を差し引いて、遺族に渡されたはずだ。自分の親分が亡くなった際も、様々なお付き合いのあった方々からのお気持ちで頂いた香典を同じようにした」