ウクライナのゼレンスキー大統領は15日、トルコ・イスタンブールでのロシアとの直接協議に応じると明らかにした。16日にも実施される。両国の代表が対面で協議するのは約3年2カ月ぶり。ウクライナは首脳会談を求めていたが、高官級となる見通し。双方の主張には隔たりが大きく、協議は難航が予想される。
ゼレンスキー氏は15日夜、トルコの首都アンカラで記者会見し「少なくとも一時停戦を達成したい」と述べ、30日間の無条件停戦の受け入れを求める考えを示した。ウクライナ側からは、ウメロフ国防相がトップの代表団を派遣。副経済相、保安庁副長官、情報機関高官らで構成する。
一方、ロシア側はメジンスキー大統領補佐官が筆頭。侵攻開始直後の2022年3月の前回協議でも代表団を率いた。ゼレンスキー氏は、ロシアが高官級を派遣したことについて「決定権を持つ人物が含まれていない」と批判した。
ロシアから直接協議を持ちかけられたウクライナは首脳会談を逆提案したが、プーチン露大統領が応じなかったため、ウクライナ側も閣僚のウメロフ氏以外は同程度にとどめた。
こうした動きを受け、ルビオ米国務長官は15日、高官級での開催は「本来目指していたレベルではない」と苦言を呈した。今回の協議で「(和平に)大きな進展があるとは思わない」とも述べ、事態の打開には米露首脳会談が必要だとの認識を示した。自身の参加も見送るとしている。
中東歴訪中のトランプ米大統領は15日、「私とプーチン(露大統領)が参加するまでは、何も起こらないだろう」と述べ、高官級による協議では進展が難しいとの見方を示した。
ゼレンスキー氏は会見に先立ち、仲介するトルコのエルドアン大統領と会談した。ロイター通信によると、エルドアン氏は両国が対話の窓口を維持することが重要だと伝え、将来的にゼレンスキー氏とプーチン氏の会談を取り持つ用意があるとも表明した。
一方、ロシア側代表団を率いるメジンスキー氏は15日、イスタンブールのロシア領事館前で声明を読み上げ「直接協議の目的は、最終的には紛争の根本原因を取り除き、長期的な和平を確立することだ」と従来の主張を繰り返した。
また今回の協議について、3年前に同じ場所で行われた前回協議の継続と位置づけていることを強調した。【ベルリン五十嵐朋子、モスクワ山衛守剛、イスタンブール金子淳】