アディダス「オアハカ・スリッポン」盗用問題:メキシコ伝統デザインの文化盗用が物議

米国のファッションデザイナー、ウィリー・チャバリア氏は、ドイツのスポーツ用品大手アディダスとの共同サンダルがメキシコ南部オアハカ州の伝統的なデザインを「盗用」した形になったとして、深く遺憾の意を表明しました。この問題は、メキシコの伝統文化や先住民コミュニティの知的財産保護を巡る国際的な議論を再び活発化させています。

デザイナーからの「遺憾」表明と問題の核心

チャバリア氏は、AFPに送った声明の中で、「名称を無断で使ったこと、オアハカ州のコミュニティと直接的かつ意義ある協力関係の下で開発されなかったことを深く遺憾に思う」と述べました。彼はまた、問題のサンダルが「オリジナルのデザインが伝わるイダルゴ・ヤララグ村のコミュニティが本来受けるべき敬意と協力的な姿勢に応えられなかった」ことを認めました。地元当局は、アディダス製の「オアハカ・スリッポン」が、同州固有の革製編みサンダル「ワラチェ」の一種を「再解釈」した製品であるとして、そのデザインの無断使用について苦情を申し立てていました。オアハカ州は、メキシコ国内でも特に先住民人口が多い地域として知られています。

メキシコ政府の強い姿勢:集団的知的財産の保護を要求

メキシコ政府は8日、アディダスに対し補償を求める方針を明確にしました。さらに9日には、アディダスとオアハカ州当局が問題解決のための会談を行うことで合意したと発表しています。メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は同日の定例会見で、「これは集団的な知的財産だ。補償が必要であり、遺産法を順守しなければならない」と強調し、メキシコ伝統文化の保護に対する政府の強い意志を示しました。

メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領が、アディダス製品「オアハカ・スリッポン」の文化盗用問題について発言する様子。メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領が、アディダス製品「オアハカ・スリッポン」の文化盗用問題について発言する様子。

相次ぐ「文化盗用」問題の背景と過去事例

今回の論争は、メキシコ当局が地域の先住民のアートやデザインの無断使用に対して、大手ブランドやデザイナーを非難した最新の事例です。これまでにも、中国の衣料通販大手シーイン(Shein)、スペインのザラ(Zara)、高級ブランドのキャロリーナ・ヘレラ(Carolina Herrera)などが、同様の文化盗用を理由にメキシコ政府から批判を受けてきました。これらの事例は、国際的なファッション業界における倫理的な課題や、先住民コミュニティの文化的・知的財産権の保護が喫緊の課題であることを浮き彫りにしています。

まとめ

アディダスとウィリー・チャバリア氏による「オアハカ・スリッポン」を巡る「文化盗用」問題は、メキシコ政府の強い介入とデザイナーの遺憾表明により、伝統文化保護の重要性を改めて世界に問いかけています。この問題は、単一の企業やデザイナーにとどまらず、グローバルなブランドがいかに地域の文化遺産に敬意を払い、公正な協力関係を築いていくべきかという、ファッション業界全体の課題を提示しています。

参照元

AFP=時事