的外れなトランプ関税批判、米国が示しているのは経済合理性を超えた国家としての政治意思だ


【写真】日本ではありえない光景!「岩盤支持層」と言われる熱狂的なトランプ支持者たち

 (神津 多可思:日本証券アナリスト協会専務理事)

■ 経済合理性では決まらない、国家・民族の重要な意思決定

 世界経済は引き続きトランプ政権の政策に振り回されている。関税政策に対する批判の声もあちらこちらで挙がっているが、それらは基本的に経済合理性の面からの批判のようだ。

 しかし、米国が今示しているのは、正当な選挙の過程を経て集約された国家としての政治意思ではないか。その政治意思とは、これまでの大規模かつ急速なグローバル化の結果として国内で高まった不満に答えようというものだと思う。

 国家としての政治意思は、常に経済合理性をオーバーライドする——

 これは、私が安全保障分野の師匠から教わった重要な教えだ。経済分野で働いてきた自分にとっては、物事の是非を経済合理性に立脚して判断しがちだ。しかし国家の政治意思は必ずしもそうではない。

 東西の歴史を振り返っても、国家、民族の重要な意思決定は、経済合理性だけで行われてはこなかった。経済合理性が常に国家としての政治意思に優先するのであれば、多くの戦争はなかっただろう。

 今回のトランプ政権の一連の政策についても、いくら経済合理性の面から批判しても、米国からすれば議論がすれ違ってしまうようなところがある気がしてならない。

 1990年代以降、急速に、そしてかつて人類が経験したことのない規模で進展してきたグローバル化は、地球上の全ての経済に大きく影響した。

 中国を例にとっても、その経済発展の目覚ましさを踏まえれば、それが世界の先進国の経済に非常に大きな影響を与えたことにはすぐ分かる。中国での経済活動によって代替された先進国内の経済活動は、結局、それぞれの経済のより得意な他の分野で吸収されなければ、マクロ的にみた経済の成長もないし、労働市場では高い失業率を余儀なくされる。



Source link