旧宮家養子の子に継承権 権謀と詐術の自民党案 成城大教授・森暢平


 現在進められる安定的な皇位継承議論は、継承の問題を脇に置き、皇室の活動維持のための「皇族数確保」策を取ることが名目であったはずである。ところが、自民党は、養子となった旧宮家にある者の「子」に皇位継承資格を与えるという有識者会議報告にはなかった主張を強調し始めている。やり方が権謀と詐術に満ちていないだろうか。(一部敬称略)

 自民党が昨年4月26日にまとめた「安定的な皇位継承の在り方に関する所見」(自民党所見)は「まずは、皇位継承の問題とは切り離して速やかに皇族数確保のための方策を講じ、その先に安定的な皇位継承の道筋を見出していくべきである」と記した。ここまではよい。

 しかしその先、旧宮家皇族の子孫を養子とする案について以下の記述があった。

「旧11宮家の皇族男子(略)の子孫である皇統に属する男系の男子を皇族の養子とすることは、皇族数確保、安定的継承のため必要な方策であると考えます。ただし、養子となった男性は皇位継承資格を持たず、その男性が養子となった後に生まれた男子は皇位継承資格を有するものとすることが適切と考えます」

 傍線部は、2021年の有識者会議報告にはない表現であり、自民党が独自に付け加えた。しかし、待ってほしい。女性皇族が結婚して皇室に残ることを自民党は認めている。ただ、その「子」は皇族でなく「一般国民」とし、皇位継承権を与えないのが自民党の立場である。つまり、旧宮家の男系男子の「子」と、女性皇族の「子」の扱いを差別化しようとしている。自民党にとって、結婚後の女性皇族を皇室に残す案は、旧宮家養子案を通すため、世論を誤魔化(ごまか)す目くらましに過ぎない。

 自民党案が通れば、昭和天皇→明仁上皇→現天皇→愛子さま→その「子」と続くべき皇統は断絶し、国民が顔を見たこともない旧宮家にある男子が、皇室に入り、その「子」が皇位を継ぐ可能性が出てくる。私には、壮大な皇位簒奪(さんだつ)計画にしか見えない。



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