8月13日夜から続いた大阪メトロ中央線の約8時間にわたる運転見合わせにより、大阪市此花区の人工島・夢洲にある大阪・関西万博の会場で、多数の来場者が一夜を明かす事態となりました。足止めされた人々は14日朝、疲れ切った表情でようやく帰路につき、この大規模な国際イベントにおける危機管理体制に大きな課題を提起しました。
運転再開までの長い夜:来場者が語る困難と切実な声
大阪メトロ中央線が全線で運転を再開したのは、日の出直後の14日午前5時25分のことでした。場内には帰宅を促す放送が流れ、警備員が寝ている来場者を起こして回る姿も見られました。
大屋根リング下のベンチで朝を迎えた川崎市幸区の公務員女性(58)は、「やっと帰れる」と安堵した様子で、夢洲駅から大阪・難波のホテルへ向かいました。彼女は13日朝から夫婦で万博を訪れていましたが、運行再開を待つ14日午前2時頃に夫とはぐれてしまいました。心臓に持病があるため、体調の異変に備えてスマートフォンの電池を温存した結果、夫と連絡を取ることができなかったといいます。給水スポットには長蛇の列ができましたが、並ぶ体力がなく、持参したわずかな飲料水でしのいだとのこと。「多くの人が休める屋内の休憩場所を増やし、コンビニなどを開けてほしかった」と切実な要望を述べました。
大阪・関西万博会場で夜を明かす来場者、開放された飲食店で疲労を癒す様子(2025年8月14日午前3時30分撮影)
大阪府茨木市の小学4年の女児(10)は、祖母(75)と会場南側の水場「ウォータープラザ」近くのベンチで夜を過ごしました。13日午前10時頃に入場してから退場できたのは、約20時間後でした。女児は「水場近くで夜は寒く、おばあちゃんと体をさすりながら過ごした。一睡も出来なかったのは初めて」とぐったりした様子で語りました。
大阪メトロ中央線運転再開後、夢洲駅から帰路につく万博来場者たち(2025年8月14日午前5時37分撮影)
パビリオンの自発的支援と浮き彫りになった運営側の課題
多くの滞留者が出た夜間の会場内では、飲食物を配ったり、スペースを開放したりするパビリオンや施設も目立ちました。京都市下京区の歯科医師の男性(71)は、韓国料理店で桃とぶどうのジュースをもらい、ドイツ館ではグミを提供してもらったといいます。「運営者からは何の説明もなく、物資も届かなかったが、パビリオン関係者の善意に救われた。この恩は忘れられない」と感謝の言葉を述べました。
オランダ館は水を配り、午前3時頃まで来場者に少しでも楽しんでもらおうと、人気キャラクターのミッフィー像と写真撮影できる機会を提供しました。その後も、高齢者や子連れ家族らが休めるよう、館内を朝まで開放し続けました。万博の副事務総長は、この状況に対し「災害に準じた対応が必要だった」と述べ、大規模イベントにおける緊急時の対応プロトコルの重要性を改めて浮き彫りにしました。
この度の大阪メトロ中央線運転見合わせに伴う大阪・関西万博会場での来場者滞留は、大規模イベントにおける緊急対応と来場者管理の重要な課題を浮き彫りにしました。個々のパビリオンによる自発的な支援は称賛に値しますが、全体的な情報提供や物資供給の不足は、主催者側の危機管理体制に改善の余地があることを示唆しています。今後、日本で開催される国際イベントの成功と信頼性のためには、来場者の安全と快適性を確保する包括的な災害レベルの計画が不可欠であると言えるでしょう。
参考文献: