一度は同意したもののドナーを拒否する妻…「臓器提供」をめぐる夫婦間トラブルの“実情”が生々しかった《最悪のケースでは…》


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 臓器移植を受けるにはさまざまなハードルがあり、提供を希望する人のなかには親族に頼る人も少なくない。しかし、親族だからといって、臓器を提供することに納得できるかというと……。

 ここでは、高橋幸春氏の『 臓器ブローカー すがる患者をむさぼり喰う業者たち 』(幻冬舎新書)の一部を抜粋し、夫婦間の臓器提供を巡る諍いを紹介する。(全3回の3回目/ はじめから 読む)

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 臓器移植法が施行される前、移植医療の黎明期では、移植手術は医療と患者側の合意の上で進められた。医師が移植についての説明をし、レシピエント、ドナーの意思確認も行っていた。

 移植手術を受けたいという夫婦が相談にやってくる。夫が慢性腎不全で人工透析治療を受けていた。ドナーになるのは妻だ。

「妻もドナーになるのに同意している。移植をしてほしい」

 夫が来院の意図を告げた。

 妻も夫に頷きながら話を聞いていて、すでに夫婦の間で話し合いが行われ、妻も腎臓提供に同意していると思われた。

「白血球の血液型」HLAの適合

 1954年、フランスの免疫学者ジャン・ドセーによって、HLAは「白血球の血液型」として発見された。HLAは白血球だけにあるのではなく、様々な細胞に存在し、組織適合性抗原として働いていることがわかった。

 HLAが遺伝子の第6染色体にあることもわかり、このHLAが人間の免疫システムをつかさどっている。HLAは両親からその半分ずつを受け継ぐため、親子や兄弟の間でも一致する確率は低いが、一卵性双生児同士の場合には、このHLAがすべて一致しているために、拒絶反応は起きないことが証明されている。

 非血縁者間ではHLAが一致する確率は数万分の1程度と言われている。HLAが合致しなければ、移植された臓器はレシピエントの体内で異物と認識され免疫システムが攻撃を開始する。



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