「法的なハードルが高く、難しい」
元県民局長の私的情報の削除を巡り、斎藤元彦・兵庫県知事は2025年5月15日、このように説明した。一方、県側は16日の県議会総務常任委員会で「弁護士と相談しており、実効的な削除要請が行えるように、行えるかも含めて検討を行っている」と述べ、斎藤知事の説明との温度差が浮き彫りとなっている。
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■流出したデータは県が保有するものと「同一性がある」
斎藤知事は15日の定例記者会見で「情報プラット法(情報流通プラットフォーム対処法)に基づく削除要請は、実際に誹謗中傷を受けたりした方が、被害を受けたということで一定の手続きができる。県がそういうふうな権利侵害というものの要件を有するのか、慎重に検討するということが今の状況、それはハードルが高いと聞いている」と説明した。
記者から「知事から削除してほしいなどのメッセージを出さないのか」と問われると、「法令の手続きに則っての対応は一定のハードルがある。どういった対応ができるのか、検討しているところ」と述べた。
また、県の担当者は16日、県議会総務常任委員会で、表現の自由の問題に抵触する問題であり、「行政機関として削除を要請する以上、それが強制力を伴わない任意のものであったとしても一定の法的根拠を整理する必要がある」との認識を示した。
斎藤知事のパワハラ疑惑などを告発し、2024年7月に亡くなった元県民局長の私的情報を巡っては、選挙期間中の2024年11月、NHK党の立花孝志氏がインターネット上に公開。兵庫県の第三者調査委員会は2025年5月13日に報告書をまとめ、県が保有するものと「同一性があるものと認められる」と結論付けた。また、県は同日、地方公務員法違反(守秘義務違反)容疑で県警に告発状を提出している。
「消費者庁のメール」でも国と県の説明に食い違い
一方で、公益通報者保護法の法解釈で、知事の認識の説明を巡っても、国と県で食い違いが生じている。
「県から知事の解釈について返答があり、消費者庁の法解釈と齟齬がないことを確認した」
消費者庁の伊東良孝担当相が16日の閣議後の会見でこのように述べたが、県の担当者は、朝日新聞の取材に対し、「齟齬(そご)がないとは伝えていない」と説明していたことも報じられた。
この問題は、斎藤知事が公益通報者保護法の体制整備義務の法解釈を巡り、「3号通報(外部通報)も含まれるという考え方がある一方で、内部通報に限定されるという考え方もある」と発言したことを巡って、消費者庁が「国の公式見解とは異なる」とメールで指摘したもの。15日の定例記者会見でも「これまで申し上げてきた通り、消費者庁の法見解はしっかり受け止めたい。消費者庁の法解釈に関する一般論はしっかり受け止めていくことが重要」と説明。斎藤知事の法解釈の認識が、消費者庁の法解釈と同一であるかの回答は避けた。
橋下氏は「無茶苦茶、削除要請に法的要件がある?」と批判
元大阪府知事の橋下徹弁護士は2025年5月16日に自身のXを更新して、斎藤知事への怒りを爆発させた。同日行われた定例記者会見の斎藤知事の発言を巡って「無茶苦茶。職員の情報漏洩にも表現の自由? 削除要請に法的要件がある? それなら元県民局長の告発にも表現の自由があるし告発者への対応にも法的要件があるんだよ!」「これだけ厳格に緻密に削除要請の法的要件を検討するなら、自分の疑惑の告発について公益通報者保護法をもっともっと厳格に解釈せなあかんで。知事失格」などと連続投稿した。