アメリカの信用格付け「最上位」から転落…トランプ減税に逆風か どうなる「アメリカ売り」


【画像】パウエル議長は利下げを急ぐ必要はないとの認識を示した

「巨額の財政赤字と増大する利子コスト」

格下げ判断は、金融市場に驚きをもって受け止められた面がある。大きな理由のひとつは、「トランプ減税」をめぐり議会での調整が進められるなかでの発表だったことだ。

トランプ政権は、一連の関税強化によって税収を増やすとともに、1期目に打ち出し2025年末に期限を迎える所得減税を延長する構えで、夏にはアメリカ議会で政府債務残高の上限引き上げをめぐる攻防が見込まれる。

ムーディーズは、現在の検討案では、「(社会保障をはじめとする)義務的支出と財政赤字の複数年にわたる大幅な削減が実現しない」として、減税・雇用法が延長された場合、今後10年間で、連邦政府の赤字は約4兆ドル(約580兆円)増加し、2024年に98%だった債務負担のGDP比率は、2035年には約134%にまで跳ね上がると予想した。これまでもムーディーズは、アメリカの財政悪化を警告するリポートを出してきており、引き下げ実施は時間の問題とみられていたが、今回、「トランプ減税」の行方がどうなるかを見届けることなく、格下げを決定したことになる。

「アメリカ売り」への影響は

アメリカの格付けをめぐっては、S&Pグローバル・レーティングが2011年8月に、フィッチ・レーティングが2023年8月に、それぞれ最上位から引き下げていて、今回のムーディーズの決定で、アメリカは最上位の格付けを大手3社からすべて失うことになった。

市場関係者の関心を集めているのは、発表が、アメリカ金利が上昇しやすい局面で行われた点だ。FRB(連邦準備制度理事会)は5月6〜7日に開いた会合で、3会合連続での政策金利の据え置きを決定し、パウエル議長は、トランプ政権の関税措置をめぐり「インフレ率や失業率が上昇するリスクが高まるのは確実だ」と指摘したうえで、経済は底堅いペースで成長しているなどとして、利下げを急ぐ必要はないとの認識を改めて示した。

FRBの早期利下げ観測が後退し、足元の景気指標が底堅さを示すなか、このところ、アメリカの長期金利は再び上昇の動きを見せていたが、ムーディーズの発表後、一時4.49%と、発表前と比べ0.05%程度高い水準をつけた。 



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