住宅事情の違い
日本でいうところのマンションを、韓国ではアパートと呼ぶ。首都・ソウルでも、とりわけ江南3区(江南区、瑞草区、松坡区)と呼ばれる地域は、1戸あたり数億円のアパートが立ち並ぶ高級住宅地だ。
「韓国のアパートは日本のマンションと違って、トイレや風呂が二つあったりします。また、寒暖差が激しいこともあり、外気の影響を受けやすい角部屋や最上階はあまり好まれません」(ソウルの不動産会社関係者)
しかし、何より日本と韓国で大きく違うのは、その値段だ。東京23区の新築マンションの平均価格は1平方メートルあたり約172万円。ここ数年でずいぶん値上がりしたが、対するソウルは約503万円と3倍近い。
ちなみに、1人当たり国民総所得(GNI)は日本が約3万4500ドルで韓国は3万6624ドルとほぼ同じ。東京23区とソウルの面積もそれほど変わらない。なぜ、これほど値段の差が開くのだろう。
「東京とソウルの住宅事情の違いは、ソウル市民が圧倒的にアパート(集合住宅)を好むことにあります。一方、日本では“一国一城の主”と言われるように、都心のマンション住まいよりも郊外の一戸建てを選ぶ人がいる。ソウルでアパートが好まれるのは治安面での安心感もありますが、そもそも一戸建ての需要が少ないのです。誰もが都心のアパートを欲しがるのですから、勢い、値段が高くなってしまうのです」(同)
名門校近くのアパートは高価格に
ソウル生まれソウル育ちのジャーナリスト・崔碩栄(チェソギョン)氏が言うのだ。
「ソウルのアパート価格は異常なレベルですが、背景には教育事情も大きく影響しています。例えば韓国には日本のような中学受験はありません。一方、高校はというと中学時代の成績によって、住んでいる場所に近い学校に振り分けられる。一見、楽そうですが、もちろんそんなことはない。ソウル大学などの難関大学に合格者を多く出す名門高校(京畿高校、ソウル高校など)は、その多くが首都に集中している。だから、親たちは郊外からでも、名門高校の近くにわざわざ引っ越し、子供を同地域の中学に入学させる。そのうえで名門高校を目指して塾に通わせ猛勉強させるのです」
だからソウルの、名門校近くのアパートは常に高いのだとか。「孟母三遷」という言葉があるけれど、親の執念は不動産価格もつり上げてしまうのだ。
「週刊新潮」2025年5月15日号 掲載
新潮社