中国当局が台湾への浸透工作において、各地の黒幇(ヘイバン、やくざ)を利用していることはよく知られているが、その実態は不明なところも多い。そうした中、中国側が台湾のやくざの資金源や勢力規模、所持する銃の数量などを詳細にまとめた「黒幇武装勢力分布図」を作成していたことが明らかになった。台湾侵攻時に内乱を起こさせる工作を進めている実態を台湾メディアが報じた。
■やくざ通じて「金欠の軍人」物色
中国軍による海上封鎖で台湾社会はパニックとなり、中国側と内通するやくざ組織が武装蜂起して動乱が発生する-。
台湾で初めて中国による浸透工作と武力侵攻を扱ったテレビドラマ「零日攻撃(ゼロ・デイ)」の予告編の1シーンだ。昨年8月に取材したプロデューサー兼脚本統括の鄭心媚氏は、制作にあたっては多くの専門家から助言を受けてリアリティーを追求したと語っていた。
台湾の情報機関「国家安全局」が今年1月に公表した中国スパイに関する報告書によると、中国当局は台湾のやくざを取り込み、「金銭に困窮している現役軍人を物色」させ、台湾政府の情報を探っている。さらに中国による武力侵攻時にはやくざ組織に対して「五星旗(中国旗)を掲げて内応し、破壊活動に協力するよう」要求しているという。
■所有武器数、ボスとの「接触方法」まで網羅
では中国側は具体的にどうやって台湾のヤクザを取り込んでいるのか。台湾の調査報道ネットメディア「鏡報新聞網」が5月に報じたところでは、台湾当局は最近、中国側が台湾のやくざ組織を研究し尽くした資料「黒幇武装勢力分布図」を発見した。
計3万字に達するこの資料は、ほぼ台湾全域のやくざ組織を地図に落とし込んで詳細に分析。「勢力範囲」や「所有武器の推計数」「動員の速度」「ボスの連絡方法」「組織を監視する警察の拠点場所」などが記されていた。
資料はさらに、各組織を取り込む際の「リスク評価」も記載。「反応が前向き」なA級と「態度が不安定」なB級、「立場が不明でさらなるテストを要する」C級の3段階に分けて評価されていた。
台湾の情報当局者が鏡報新聞網に語ったところでは、中国当局はやくざ組織の資金源を把握した後、そのカネの流れを断つなどして脅迫し、中国側に取り込んでいる。中国で闇ビジネスを展開しているやくざ幹部が現地で当局の庇護(ひご)を受けているケースもあり、そうした者たちを取り込むのは「赤子の手をひねるように易しい」という。