【ワシントン=塩原永久】トランプ米大統領は19日、ロシアのプーチン大統領との電話会談について「とてもうまくいった」と語った。だが、トランプ氏が求める「無条件停戦」にプーチン氏は応じる気配をみせず、停戦実現に向けた打開策は見いだせない。トランプ政権の「仲介外交」が失速する恐れがある。
トランプ氏は会談後、交流サイト(SNS)へ投稿し、ウクライナとロシアの停戦条件に関する協議に関し、「誰も知らないような交渉の細部を彼らは把握している」と指摘。停戦実現には両国の直接交渉に任せるほかないとの認識を示した。
ローマ教皇庁(バチカン)が仲介に意欲を示しているとも明かし、トランプ氏自身が仲介への熱意を失い、交渉から離脱しようとしているかのような印象を与えた。
その点を記者団に問われると、トランプ氏は「違う、違う」と強く否定したが、袋小路に陥った停戦交渉にバチカンが関与すれば「特別な重みをもつかもしれない」と期待を寄せた。また、進展がなければ「私は(交渉から)退き、彼らは続けるしかない」と語り、仲介役を延々と続ける考えはないことを示唆した。
米政権がウクライナや欧州との連携を強めているのは確かだ。トランプ氏はプーチン氏との会談に前後して2回、ウクライナのゼレンスキー大統領に電話した。
米ワシントンで2月、ゼレンスキー氏と報道陣の前で口論となったバンス米副大統領は19日、訪問先のローマで記者団に「トランプ大統領はプーチン氏に『あなたは真剣か?』と問いかけようとしていると思う」と話し、協議の停滞に不満を募らせる政権内の空気を代弁した。
欧州各国は対露制裁強化を視野に入れている。だが、トランプ氏はこの日も、プーチン氏が「戦争を終わらせたがっていると信じている」と言及し、欧州側との認識の隔たりをうかがわせた。