【AFP=時事】南アフリカ・ヨハネスブルクのにぎやかなコメディーショーでは、ちょうど1週間前に約50人の南ア白人を「難民」として米国に送ったチャーター便について、どのコメディアンもジョークを飛ばさずにはいられなかった。
そうしたコメディアンの一人、チツィ・チウミヤさん(31)が、多様な人種が座る観客席の中に白人カップルを見つけ、わざと驚いたような表情で「白人だ! まだ残っている! 彼らにもっと快適に過ごしてもらわないと」とジョークを飛ばすと、会場は爆笑に包まれた。
ドナルド・トランプ米大統領は、南ア政府が同国の白人「アフリカーナー(オランダ系を中心とする南ア生まれの白人)」を迫害していると批判している。だが、1994年に多数派の黒人から政治的・経済的権利を剥奪する残忍な人種隔離政策「アパルトヘイト」が廃止されてから30年以上が経過した今も、少数派の白人による支配の遺産が色濃く残る南アでは、トランプ氏の主張は概ね嘲笑の対象となっている。
米国と南アの関係は今年、さまざまな政策をめぐって急激に悪化しているが、シリル・ラマポーザ大統領は21日に米首都ワシントンでトランプ氏と会談し、関係修復を目指す見通しだ。
■「痛みを笑い飛ばそう」
完売となった毎週恒例のコメディショーには、カップル、家族、友人連れなど、さまざまな背景や人種の人々が集まっていた。
共同司会者のシャンレイ・ファン・ウィックさんはアフリカーンス語を話すが、「カラード」のコミュニティーの出身だ。「カラード」とは、かつてのアパルトヘイト体制によって、さまざまな混血の人々を指すためにつくられた呼称だ。
ウィックさんは観客に向かって「私もアフリカーンス人なので、応募しようとした」「でも、彼らはとてもはっきりしていたよ」と自分の肌を指さした。
コメディアンのディラン・オリファントさんが「特権を持っていると、平等が抑圧のように感じるのさ」と皮肉を言うと、観客は歓声を上げた。