ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は20日、ロシアはウクライナでの戦争を続けるために「時間稼ぎをしようとしている」と非難した。前日には、ゼレンスキー氏およびロシアのウラジーミル・プーチン大統領と、それぞれ個別に電話協議したドナルド・トランプ米大統領が、停戦に向けて進展があったと主張していた。
ゼレンスキー氏は、「ロシアが非現実的な条件を提示し、(停戦への)進展を妨げ続けるのであれば、厳しい結果が伴うことになる」とソーシャルメディアに投稿。ウクライナ政府には交渉する用意があると付け加えた。
トランプ氏は19日、ゼレンスキー氏とプーチン氏と別々に電話で協議した後、ロシアとウクライナが戦争の停止と終結に向けて「直ちに」交渉を開始すると述べた。
トランプ氏は、話し合いは「非常にうまくいった」と説明すると同時に、和平の条件は当事者同士で交渉する必要があるとした。
一方、プーチン氏は、「将来の和平合意の可能性に関する覚書」の作成で、ウクライナと協力する用意があると述べた。だが、欧米諸国が求めている30日間の無条件停戦には触れなかった。
ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は20日、ロシアが提案した覚書について「決断」し、対応するかどうかはウクライナ政府次第だと述べた。
ただ、停戦交渉の開始が間近に迫っているとの見方を、クレムリン(ロシア大統領府)は否定している。ロシアの国営通信は、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官が覚書の作成について「期限はないし、期限を設けることはない」と述べたと伝えた。
こうした中、ゼレンスキー氏は西側の同盟国からの支援を強化しようと、新たな外交活動を開始した。
フィンランドのアレクサンドル・ストゥブ大統領との電話協議を終えたゼレンスキー氏は、ウクライナはパートナー国と連携し、ロシア政府に圧力をかけて確実に「ロシアの行動を変えさせる」ようにすると、ソーシャルメディアに投稿した。
ロシアをめぐっては、欧州連合(EU)とイギリスが20日、ロシアに対する追加制裁を発表した。
EUは、ロシアが制裁回避のため「影の船団」として使っているとされる、石油タンカー200隻近くをブラックリストに追加。ロシア政府がウクライナでの停戦に合意しない場合、「より厳しい対応」を取ると警告した。
イギリスは、軍装備品などを提供するロシアの軍事サプライヤーや、エネルギー輸出、金融機関を標的とした制裁パッケージの一環として、タンカー18隻を新たに制裁対象とした。
こうした制裁措置は、ウクライナで18日、記録的なドローン(無人機)攻撃があったことを受けてのもの。ウクライナ政府関係者は、ロシアによる全面侵攻開始以来、最大規模のドローン攻撃だとしている。
トランプ氏は19日、ロシアに対する追加制裁には加わらない方針を示し、制裁がこのところの進展の妨げになるかもしれないと、記者団に話した。
前線では激しい戦闘が続いている。過去24時間で177件の衝突が起き、ロシア側で1000人以上の死傷者が出たと、ウクライナは報告している。
20日のEU閣僚会議に先立ち、ドイツのボリス・ピストリウス国防相はロシアが攻撃を継続していることについて、「長らく聞かされてきた口先だけの言葉よりも、はるかに雄弁だ」と指摘した。
「プーチンは明らかに時間稼ぎをしている。残念なことに、彼は実際あまり平和に興味がないのだと言わざるを得ない」とも、国防相は述べた。
プーチン氏はこれまでのところ、アメリカとウクライナが提案する30日間の停戦を拒否している。そして先週には、ゼレンスキー氏が提案したトルコ・イスタンブールでの直接会談にも応じなかった。トランプ氏はプーチン氏が出席するなら自分も出席する意向を示していたが、プーチン氏は欠席した。
クレムリンはこれまでに何度か、一時停戦を発表している。今月8日から11日にも、第2次世界大戦の対独戦勝記念日に合わせて、ウクライナでの戦争を一時停止させると、一方的に発表した。ウクライナは不信感を理由に、ロシアのこうした提案を拒否。敵対行為の即時かつ継続的な停止を要求している。
4月の復活祭の時期にも、ロシアは30時間にわたりすべての敵対行為を停止すると発表。ウクライナもこれに同意した。しかし、ウクライナとロシアは互いに、相手が数百件の違反行為をして停戦を破ったと非難し合った。
ロシアは2022年2月、ウクライナへの全面侵攻を開始した。
(英語記事 Zelensky accuses Russia of ‘buying time’ to stall truce talks)
(c) BBC News