おでかけが楽しくなりますようにーー。そんな願いを込めて、子ども用の車いすを知ってもらうためのマークを作り、広めようとしている看護師の女性がいる。中1と小1の娘2人が難病で、生活全般に車いすが必要だ。自らマークを作るに至った過程には、当事者の親として直面した「生きづらさ」や、母としての後悔があった。
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■2人の娘に先天性の難病
愛知県清須市に住む看護師・小林昌代さん(41)の長女の明愛(めい)さん(12)は、「コルネリア・デランゲ症候群」という先天性の難病を持って生まれた。
医療従事者である昌代さんも「まったく聞いたことがなかった病名で、医師から告げられた時、『先生、もう一回言ってください』って思わず聞き返してしまいました」と振り返る。
会話はできないが、人と関わることが好きで、人の表情をよく見ている。好きなことや嫌なことは動作で意思表示をするという。リハビリによって短い距離を歩けるようにはなったが、しゃがんだり飛び跳ねたりはできない。
6歳下の次女・蒼依(あおい)さん(6)は染色体異常が原因の「18トリソミー」という難病だ。会話だけではなく意思表示も難しく、歩くことはできない。
2人とも、生活全般に介助が必要で、移動には子ども用の車いすが必要になる。
■話せばわかってもらえるけれど
明愛さんを生み、育てる中で昌代さんが感じたのは、子ども用の車いすの存在が知られていないことから生じる暮らしにくさと、難病や障害者の当事者と家族に対する、どこか遠慮がちな視線だ。
例えば、障害者など特別な配慮が必要な人のために設けられている「優先駐車場」を利用しようとすると、駐車場の警備員が、なぜそこに停めるのかと尋ねてくることが多かった。
障害者手帳を見せて、娘の病気のことを一から毎回説明して…。話せばわかってもらえるのだが、行く先々で何度も聞かれると、心が疲れてくる。
■「すみません」が口をついて
「すみませんって言葉が何度も口をついてしまって。暮らしにくいなあって思うことが何度もありました」(昌代さん)
蒼依さんが生まれ、子どもが2人になると、外出時は昌代さんと夫がそれぞれ車いすを押して歩く。夫婦にとってはそれが日常なのだが、
「夫婦が2人とも車いすを押している姿ってなかなかない光景で、さらに乗っている子どもが赤ちゃんではないので、とても目立つのだと思います。行きかう人たちから視線を向けられがちだなとは、ずっと感じていました」