1989年の消費税導入以来、長らく不人気だった消費税減税が、初めて選挙の主要な争点として浮上している。今夏の参議院選挙では、主要野党がこぞって1〜2年程度の期間限定の消費税減税を公約に掲げている。
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昨年の衆議院選挙と同様に、野党各党は自民・公明連立政権が参院選で過半数を割り込むことを期待している。これまでも増税反対が選挙の争点となることはあったが、一時的な減税でさえこれほど重要な争点となるのは異例だ。
今年は、インフレによる家計への打撃に加え、ドナルド・トランプ大統領の貿易戦争による所得への悪影響という懸念が、その重要性を一層高めている。
私自身は、消費税は一時的な減税ではなく、大幅に引き下げるべきと考えている。その結果失われる税収は、過去数十年にわたって行われた法人所得税の大幅な減税の一部を撤回することで、容易に補填できる。
■消費税の減税分は法人税の引き上げで補填を
以下では、経済的な合理性に焦点を当てて議論を進めるが、その前に、この問題の政治的な側面についてもう少し触れておこう。
2020年、当時野党第一党だった立憲民主党は、私が主張するような消費税減税と法人税増税を組み合わせた政策を提唱していた。しかし2024年、野田佳彦元首相が立憲民主党に合流し、瞬く間に党首の座についた。
2012年、野田氏は消費税増税を主導し、その結果、2013年の参議院選挙で民主党(立憲民主党などの前身)は安倍晋三氏率いる自民党に大敗を喫した。彼はその教訓を学んでいないようだ。2024年の衆議院選挙において、野田首相は消費税減税と法人税増税の両方を党の公約から削除してしまった。
今こそ、2020年のスタンスを復活させるべき時だ。自民党は現在非常に脆弱であり、多くの参議院議員が、連立与党である公明党と同様に、独自の期間限定減税案を提示するよう党執行部に求めている。
しかし、自民党幹部は、減税の財源を他の増税で賄わなければ無責任だと主張している。自民党の財政タカ派を動かすもう一つの要因は、財務省が、一度税率を引き下げると、再び引き上げるのが政治的に困難になることを懸念していることだ。