まだ7月にもかかわらず、千葉県の農家では早くも新米の収穫が始まっています。例年より早いこの動きは、日本の食卓に並ぶ米の価格にどのような影響を与えるのでしょうか。今年の米の供給状況と市場価格の行方について、最新の情報をお伝えします。
7月に輝く黄金の稲穂:千葉県で「超早場米」が収穫開始
千葉県内のコメ農家を訪れると、7月25日にはすでに「新米あります」の文字が掲げられ、青々とした稲とは対照的に、黄金色に染まった田んぼが広がっていました。強い日差しの中、収穫作業が精力的に行われています。
新田野ファームの藤平正一社長によると、栽培されているのは通常の生育期間より短い「超早場米」と呼ばれる品種です。具体的には「五百川(ごひゃくがわ)」という品種で、植え付けから収穫までわずか100日から120日で完了します。今年の作付けは3月20日から始まり、先週には早くも収穫が開始されました。
千葉県で7月に収穫が始まった黄金色の「超早場米」の田んぼ
猛暑が続く近年の気候において、通常の米作りでは生育異常などの問題に直面することが少なくありません。しかし、収穫時期が早まる超早場米は、こうした高温障害のリスクを回避できるという大きな利点があります。藤平社長は「人よりも早く刈れる、早くできる品種を導入し、今年はそれが正解だった」と語り、気候変動に適応するための工夫が成功している様子がうかがえます。
すでにこの超早場米の新米は直売所で販売されており、価格は5キロあたり3500円。東京方面からも多くの消費者が買い求めに来るといい、収穫されたばかりの1トンの米袋が13袋も積まれた倉庫は、わずか一日で空になるほどの人気ぶりを見せています。
備蓄米の現状と2025年新米価格の展望
現在、スーパーマーケットでの米の価格はどのようになっているのでしょうか。7月25日に都内のスーパーを訪れると、5キロ3229円の備蓄米が棚いっぱいに積まれていました。ベニースーパーの赤津友弥本部長は、「100袋程度の在庫を抱えているが、比較的安い価格であればすぐに動いていたものが、今は動きが鈍くなっている」と、現在の市場状況を説明しました。
多くの備蓄米が在庫として残る中、今年の秋口から全国的に出回る新米は、消費者にとって買い求めやすい価格になるのでしょうか。JA関係者によると、全国的な作付け面積の増加傾向から、新米の供給が豊富になり、店頭価格が5キロ3500円前後に落ち着く可能性も指摘されています。
しかし、もし新米がその価格で推移した場合、農家の収入は安定するのかという懸念も浮上しています。藤平社長は「普通だったら4000円から4500円で新米を売っているが、ガソリン代、機械代、肥料代が高騰しており、このままでは農家が廃れていってしまう」と、厳しい現状を訴えています。「『この間のコメはおいしかったね』と言われることが、米作りのやりがいにつながる」と語る藤平社長の言葉には、品質へのこだわりと農業を守りたいという強い思いが込められています。
まとめ
7月に始まった千葉県の「超早場米」の収穫は、日本の米供給に新たな選択肢をもたらし、特に気候変動への対応策として注目されています。しかし、一方で市場に流通する備蓄米の在庫状況や、新米の価格推移が農家の経営を圧迫する可能性も示唆されています。消費者の購買意欲と農家の安定した収入確保の間で、今年の米市場はデリケートなバランスを保つことになりそうです。日本の食を支える米の未来は、生産者と消費者双方の理解と協力にかかっています。
参考文献
- テレビ朝日「グッド!モーニング」2025年7月26日放送分より