〈男子中学生と入れかわった少女を熱演→オファーが殺到したが…当時16歳の小林聡美が「1年間テレビに出なかった」深いワケ〉 から続く
【画像】「仲良く腕を組んでください」→取ったポーズは…ワンピース姿で結婚会見に臨んだ小林聡美(当時30歳)
きょう5月24日に60歳の誕生日を迎えた俳優の小林聡美。オーディションをきっかけに中学2年生でドラマデビューすると、出演したドラマや映画の多くが熱い支持を集めてきた。エッセイストとしても活躍し、その人柄も“自然体”と評される彼女の人生観とは?(全2回の2回目/ 最初 から読む)
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なぜ「自然体」と評されるのか?
小林聡美の演技や演じる役について「自然体」との評がつきまとうようになったのも、 #1 でとりあげたドラマ『すいか』(2003年)あたりからだろう。ただ、本人はこうした世間でのイメージにあまりピンと来ないようだ。ある記事では、演じる役に「世間の物差しにとらわれず、自然体で生きようとする人」が目立つことを指摘され、次のように返している。
〈《ご縁があって、確かにそういう役をいただくことは多いですが、人は、どんなに生きても完成がないわけで……。ずっと“自分らしいって何かな?”と、模索し続けているわけじゃないですか。“自然体”が具体的にどういうことを指すのかは私にはよくわかりませんが、常に、何かを模索し試しながら生きていく。それはある意味、人間らしいのかなとは思いますね》(『週刊朝日』2021年1月1・8日号)〉
役ばかりでなく演技によっても小林は、誰にも代えがたい唯一無二の魅力を放っている。俳優のなかにも彼女と仕事をしたがる人は多い。その根源は一体どこにあるのか? これについては、小林の演技を一ファンとしてずっと見ていたいと思うと、かねがね語っていたもたいまさこにもずっと謎だったという。だが、映画『かもめ食堂』(2006年)で改めて共演してみてようやく答えを見出し、本人との対談で以下のように熱っぽく語っている。
「こういうふうにプレーンでいられる人っていない」
〈《すっごいね、飛ばないよね。飛ばないのに、全然違う人になってる。(中略)役者ってさ、「この役」って入って、急になんか低い声で、こういう役だからみたいな。ガラッと変わるけど、小林さんは……。本当、人がね、この音で出るだろうなと思うのと、全然違う音で出るとか。それがでも、不自然じゃないの。普通だと、そうやって出ると、絶対に不自然になって。作ってるなって、決めてきたな、こいつって分かるんだけど、この人そうじゃない。こういうふうに、プレーンでいられる人っていない》(小林聡美『散歩』幻冬舎、2013年)〉
ようするに「普段の自分から地続きのまま別人になりきっている」「役をつくっているのに不自然じゃない」ということだろう。したがって、素のままで演じているというような意味での自然体とは全然違う。
ちなみに小林自身はデビュー以来、ことあるごとに自分に俳優は向いていないと口にしてきたが、もたいは《これが、「私、向いてるわ」と思ったら、どんだけの芝居するんだろうと思うけど(笑)》と訝しんでいる(前掲書)。