『次世代リーダーが知っておきたい 海外進出”失敗”の法則』では、会計士として監査にかかわる筆者が海外進出の失敗談を紹介している。「いつかは海外で」と願う日本人ビジネスパーソンの転ばぬ先の杖となるよう、抜粋して掲載する。
前回、有能とされていたバブル世代の日本人ビジネスパーソンが、中国で部下の不正を見抜けなかった事案を紹介した。アジアビジネスにおける不正を防ぐポイントについて解説する。
解説編 アジア圏ではよく見られる、キックバック不正
バブルを経験し、グローバルに活躍していた人材もすでに50代となりました。ジャパン・アズ・ナンバーワンの黄金期を体験したこの世代の一部には、事例のUさんのようにアジアをいまだにどこか見下しているような人がいます。
たしかに当時、日本はアジア経済の先導者であり、他の国々の多くは発展途上でした。しかし、この構図は現代にはまったく当てはまりません。
実際にアジアの主要都市を巡ってみるとわかりますが、ビル群が立ち並び、富裕層が数多く住み、東京と差のないくらいに発展を遂げています。中国もまた然りで、特にIT技術の普及は日本の上をいっています。そうした現実を理解していれば、「アジアが日本よりも下」などとはまったく考えなくなるはずです。
事例では、日本語ができる中国人の経理部長が、Uさんを手玉に取って水増し請求をうまく隠しています。
私が知る限りですが、中国の人々は互いの結び付きを大切にし、家族や仲間には尽くす反面、その結び付きの外にいる相手にはビジネスライクに接する印象です。仮に中国の拠点にいる人材のすべてが現地人であるなら、幹部たちの結束力は固く、日本からの干渉をなかなか受け付けない可能性もあります。
Daisuke Mori