トランプ米政権が、世界中から学生を集める名門・ハーバード大の留学生受け入れ認定を取り消した。同大には日本からも多くの学生らが在籍しており、不安や極端な政策への憤りの声があがった。(猪塚さやか、川畑仁志)
「みんな混乱」
「留学が中止になったら、これまでの努力が無駄になってしまう」。2月からハーバード大に約1年間の予定で留学し、量子コンピューター研究に応用可能な技術を学ぶ東京大工学部の男性(20)は不安げに語る。
米政府による認定取り消しの発表直後から、研究室の仲間同士のチャットはこの話題で持ちきりに。ハーバード大の留学生は他大に転籍しないと米国での滞在資格を失うことになり、男性は、「大学は政権に屈しないでほしい」と気をもむ。
日本学生支援機構の調査によると、2023年度に米国に留学した学生は1万3517人。留学先全体の15%を占め、最も多い。ハーバード大には、日本人の留学生や研究者が260人在籍する。
23年から同大の大学院「ケネディスクール」に留学している男性(27)は、「留学中の学生に転学を要求するという極端な施策が出てくるとは思っていなかった」と驚く。留学生の間では、一時帰国すると再入国できなくなる可能性や、国外退去の根拠とするため、軽微な交通違反での摘発、スマートフォンからの個人情報の無断収集を恐れる声も飛び交う。ハーバード大はホームページ上で「留学生を受け入れるため全力を尽くしている」との声明を発表したが、男性は、「情報が錯綜(さくそう)して、皆、混乱している。大学から今後の方針などについての連絡はなく卒業できるのか不安だ」と話した。
他の大学
留学支援会社「留学ジャーナル」(東京)によると、米国では大学の籍を失うと滞在資格が取り消される。米国を退去するまでの猶予期間は、成績不良による退学など、本人に責任がある場合で通常1~2週間という。他大への転校手続きが猶予期間内に済めば資格は取り消されない。ただ、米国の大学は6月から夏休みに入るため、同社では「多くの(ハーバード大への)留学生は帰国せざるを得ないのではないか」と話す。