近年、鉄道写真の撮影を趣味とする「撮り鉄」による迷惑行為が社会問題として注目を集めています。公共の場でのマナー違反に留まらず、私有地への侵入や器物損壊、さらには列車運行への妨害行為まで、その内容は多岐にわたり、世間からの厳しい目が向けられています。かつては趣味として広く認知されていた「撮り鉄」が、なぜこれほどまでに批判の対象となっているのでしょうか。本記事では、鉄道トレンド総研に寄せられた事例などを基に、問題行動の実態と、その背景にある課題を深掘りします。
エスカレートする迷惑行為:「罵声大会」から列車妨害まで
「撮り鉄」による迷惑行為としてまず挙げられるのが、「罵声大会」と呼ばれる一部ファンの口論です。撮影場所を巡ってファン同士が罵り合い、怒鳴り合う様子がSNSなどで拡散され、その排他的な言動が問題視されています。ひどいケースでは、駅員に対して「下がれよ、安月給」といった暴言を吐く撮り鉄の動画が拡散され、多くの批判を浴びました。このような行為は、鉄道利用客だけでなく、他の鉄道ファンにとっても不快なものです。
さらに深刻なのが、線路への無断侵入による列車運行の妨害です。2023年6月には、寝台特急「カシオペア」を撮影しようとした男性2人が線路に侵入し、列車を緊急停止させる事態が発生しました。この件では2人が鉄道営業法違反罪で略式起訴され、科料9千円の略式命令が下されましたが、こうした行為は乗客の安全を脅かすだけでなく、運行ダイヤに大きな影響を与え、社会に多大な迷惑をかけるものです。
私有地への侵入と無断伐採:住民が被る深刻な被害
迷惑行為は公共の場に限りません。一部の撮り鉄による私有地への無断侵入や器物損壊も深刻な問題となっています。彼らの言い分は「写真に映り込むから」という身勝手なもので、住民の生活や財産を軽視する姿勢が浮き彫りになっています。
記憶に新しい事例としては、2025年8月上旬にしなの鉄道沿線で発生した事案が挙げられます。撮り鉄が無断で住宅の敷地内に侵入し、庭先の木を伐採するという行為に及びました。この件は住民からの苦情によって明るみに出ましたが、その影響で後に予定されていた人気レア列車の運行が取りやめになるなど、他の多くの鉄道ファンも巻き込まれ、結果的に趣味の機会を失うという二次被害が生じました。このような行為は、愛好家全体のイメージを著しく損なうだけでなく、地域住民との関係を悪化させ、ひいては鉄道会社との信頼関係も揺るがしかねません。
鉄道の写真を撮る人々のイメージ
まとめ:マナーとルールの徹底が喫緊の課題
「撮り鉄」による迷惑行為は、一部の心ない行動が社会全体の批判を招き、趣味そのものの存続を危うくする事態に発展しています。駅員や鉄道利用者、地域住民、そして他の鉄道ファンにまで多大な迷惑をかける行為は決して許されるものではありません。鉄道会社や警察による取り締まり強化も進められていますが、何よりも重要なのは、愛好家一人ひとりが鉄道趣味を取り巻く環境への配慮と、社会人としてのマナー、そしてルールの徹底を強く意識することです。健全な鉄道趣味文化を未来に繋ぐためには、個々の行動が問われていると言えるでしょう。





