女優の活動から少し距離を取り、いまはヨガのインストラクターとして活動する松本莉緒さん。彼女の話は、聡明さを感じるものでした。芸能界の荒波を子どもながらにとらえ、復帰後も自分に問いかけて。そしていまがあります。(全3回中の1回)
■充実していた芸能の仕事とは裏腹に抱えた悩み
── 1994年に11歳で芸能界にデビューして以来、『ガラスの仮面』『聖者の行進』『モテキ』など、数多くの話題作に出演し、CMなどでも活躍した松本莉緒さん。2014年にヨガインストラクターの資格を取得し、現在は、新潟に移住してヨガスタジオを主宰されています。女優として活躍されていた松本さんの転身に驚いたという声も多かったようです。
松本さん:お芝居をするのは楽しかったのですが、じつは芸能界という華やかな世界に特別な夢や憧れがあったわけではなかったんです。そもそもスカウトがきっかけで、母から「内向的な私にとっていい刺激になるかもしれない」と、背中を押されたのが始まりでした。演技を学んでいたわけではなく、いい出会いとタイミングに恵まれていたんだと思います。ただ、中学生のころ「このまま流れに任せて進んでいいのかな…」と、怖くなってしまって。
── 何がそう感じさせていたのでしょうか?
松本さん:仕事は楽しく、やりがいのようなものも感じていましたが、自分が活動した仕事への対価、金額など一切管理していませんでしたし、仕事のペースコントロールができないことや、学校で過ごす友だちとの時間や自分の考えも通りづらいような不安があったんです。私の心もいつの間にか、手の届かないところに行ってしまうような感覚もありました。
いっぽうで、周りの期待に応えたい気持ちもありました。子どもながらにプロ意識はあって、朝早くても自分で起きて現場に向かい、セリフもきちんと覚えていました。でも、「私は誰のために演技をしているんだろう。本当に自分のやりたいことなのかな」と、だんだん思うようになって。自分に嘘をつけない性格なので、いわゆる、周りの大人の思い通りに進みたくないという、心の声を無視することができなかったんです。