「医師は高収入」と聞く一方で、医学部の学費は非常に高いというイメージがあります。本当に医師になれば学費の負担は回収できるのでしょうか? また、学費はどのくらい必要なのでしょうか?
▼会社員で「年収1000万円」以上の割合は? 大企業ほど高年収を目指せる?
この記事では、医師の年収と医学部の学費について、それぞれの相場や違いをわかりやすくご紹介しながら、将来的にどのような見通しを持つべきかまで解説していきます。
医者の平均年収はいくら? 勤務医と開業医で大きな差
厚生労働省が行った「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、医師の平均年収は約1200万円でした。男女別にみると、男性医師が約1450万円、女性医師が約1040万円です。
また、中央社会保険医療協議会の「医療経済実態調査報告―令和5年度 実施」によると、勤務医の平均年収は1461万円、開業医は2631万円と、開業医の方が1.8倍ほど年収が高い傾向にあります。
ただし、病院の規模や診療科、地域によって差があります。また、医師は長時間勤務や夜勤など、過酷な労働環境に置かれることもあります。高収入の裏には、長い学習期間とハードな勤務があることも理解しておく必要があります。
医学部にかかる学費はどれくらい? 国公立と私立で大きく違う
医学部の学費は、国公立と私立で大きく異なります。
■国公立大学の場合
学費は6年間で約350万円前後ですが、2025年度から一部大学で値上げがあり、410万円程度になる場合もあります。一般の学部と同様に、入学金と授業料が明確に定められています。
■私立大学の場合
大学によって差がありますが、6年間で約1800万円〜4600万円が必要とされます。
たとえば、日本医科大学や順天堂大学などは比較的学費が抑えられており、6年間で2000万円前後です。一方、東京女子医科大学などは4000万円を超えることもあります。加えて、教科書代や実習費、受験料や予備校費なども必要になるため、トータルで数百万円〜数千万円の負担を見込む必要があります。
学費と年収のバランスは取れる? 費用対効果を冷静に考える
医師として働くことで、高い学費を「回収」できるかどうかは、多くの家庭が気になるポイントでしょう。単純計算では、仮に私立医学部で3000万円の学費をかけても、年収が1500万円になれば2〜3年分の年収で学費相当額を稼ぐことは可能です。
ただし、実際にその年収に到達するのは専門医取得後や30代後半以降が一般的です。しかし、実際には医師になるまでに最低でも6年かかり、さらに初期研修医(年収約400〜500万円)からスタートします。その後、専門医の取得やキャリアアップに応じて年収は増えますが、すぐに高年収になるわけではありません。
また、奨学金を借りる場合は、返済計画もしっかりと立てる必要があります。自治体や病院によっては、奨学金返済を免除する制度もあるので、進学前に調べておくことをおすすめします。費用対効果という点では、経済的なリターンは大きい職業ですが、それ以上に使命感ややりがいが求められる仕事でもあります。