韓国国内でも広く使われている中国製の太陽電池インバーターから正体不明の通信装置が発見され、米エネルギー当局が調査を進めているといいます。
インバーターは太陽電池で生じた出た直流(DC)の電力を交流(AC)に変換し、家庭や電力網に送る装置です。電力網に組み込まれているため、ハッカーがインバーター経由で電力網に入り込んだり、送電システムを切ったりすれば、大停電などの大混乱が起きる可能性があります。国家エネルギー安全保障には大きな弱点となります。インバーターは太陽電池だけでなく、風力発電機、電気自動車(EV)用の二次電池などにも使われていますが、米当局は中国製二次電池からも説明書にはない通信装置を発見したということです。
これまでも中国製監視カメラや掃除機などが個人情報の流出経路になりかねないとの懸念が少なくありませんでした。インバーターはそうした懸念どころではないため、欧米各国は国家エネルギー安全保障を揺るがしかねないと懸念しています。
■「遠隔操作でエネルギーインフラ破壊」
ロイター通信は5月15日、匿名の米エネルギー当局者2人の話として、中国製太陽電池インバーターから悪質な通信装置が発見されたと報じました。米国のセキュリティー専門家が昨年下半期から9カ月にわたり、電力網に組み込まれている中国製太陽電池のインバーター多数を分解して点検した結果、一部製品から商品説明書に記載されていない通信装置が発見されたというのです。
インバーターにはメーカーが遠隔でソフトウエアを更新し、メンテナンスを行うための通信装置が組み込まています。中国製インバーターを使う米国のインフラ事業者は、中国企業がそうした手法でインバーターにアクセスすることを防ぐために、ファイアウォールを設置します。悪質な通信装置はファイアウォールを迂回してインバーターにアクセスできるようにするものだそうです。ロイターは「問題の通信装置は潜在的に電力網の不安定やエネルギーインフラ破壊、大停電など致命的な結果を招きかねない危険要素だ」と伝えました。
米エネルギー省はロイターの取材に対し、「新興技術に関連するリスクを継続的に評価している」とし、「悪意ではないかもしれないが、購入する側は製品の性能に対する完全な理解が必要だ」と回答しました。発見された未登録の通信装置の機能と意図については確認中としています。
中国は太陽電池だけでなく、太陽電池インバーターの分野でも世界シェア80%以上を占めています。華為(ファーウェイ)と陽光電源(サングロー・パワーサプライ)、銀浪科技(ジンロン・ソリス)など中国企業が世界1~3位を独占しています。韓国で流通しているインバーターも大企業のブランドが付いていますが、実際は95%が中国製とされます。