トランプの誤算 一方的な関税に日本が「壮大で見事な」抵抗


トランプは2017〜21年の大統領1期目の経験から、日本を与しやすい相手だと踏んでいたようだ。当時の安倍晋三首相の「追従」ぶりを考えれば、それも無理はないだろう。トランプにとって故・安倍ほど、早い時点で自分をまっとうに遇し、力を発揮できるように手助けしてくれた世界の首脳はいなかった。

2016年11月、安倍は世界の首脳のなかで真っ先にニューヨークのトランプタワーに駆けつけ、大統領選に勝利したばかりのトランプと面会した。トランプが娘とその夫を同席させたことに、日本の政界では不快感が広がった。しかし安倍は意に介するそぶりも見せず、トランプを信頼に足る人物だと世界に請け負った。

安倍は記者会見で、トランプは「信頼できる指導者だと確信した」と滔々と語った。

その評価は裏切られる。就任早々、トランプは、日本政府の中国抑え込み戦略の要のひとつ、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を決めた(安倍はトランプに残留を働きかけていた)。トランプはまた、日本製品を関税の適用除外にしてほしいという「友人」安倍の懇願も拒んだ。さらには北朝鮮の独裁者、金正恩(キム・ジョンウン)との奇妙な「ブロマンス」にかまけ、日本の国家安全保障を損ねた。

なかでも安倍にとって最もばつが悪かったのは、トランプが安倍からノーベル平和賞に推薦されたと公言したことだろう。その結果、安倍は与党の自由民主党内などで釈明に追われるハメになった。

第2期トランプ政権には、現在の石破茂首相も下手に出て大幅な譲歩をしてくれると期待する十分な理由があった。だが、その目算は外れつつある。石破政権の日本は、トランプ1.0と貿易協定を結んでから6年もたたないうちに、トランプ2.0と新たな2国間協定を急いで結ぼうという姿勢ではない。話し合いは結構。だが、日本経済を犠牲にしてでも拙速に結論を出す? それは御免こうむる。



Source link