米・ドーピング公認大会「エンハンスド・ゲームズ」はアスリートを破壊に導く《人体実験》でしかない――五輪銀メダリストと医師が語る“怖さ”


【画像で見る】ドーピング前後のベン・ジョンソン選手の体つきの変化や、エンハンスド・ゲームズのウェブサイト画面

■臨床試験の被験者として参加

 短距離走、水泳、重量挙げなどの競技が行われるが、特記すべきは、▼薬物を使わない自然な競技参加、▼選手独自の強化プロトコルによる参加、▼アメリカ食品医薬品局(FDA)の開発段階の薬物を使用する臨床試験の被験者としての参加、の3つから選べるという点だ。

 つまり、ドーピングが認められるという、スポーツ界の規範を真っ向から否定するものだといえる。

 その歴史は古く、近代オリンピック黎明期から存在し、当時は興奮剤のストリキニーネや、モルヒネ、コカインなどが使用されていた。第2次世界大戦後はアンフェタミンがスポーツに導入され、疲労感を麻痺させることで、限界を超えるパフォーマンスを可能にした。

 その効果は絶大で、2004年8月にはアメリカの『ニュー・イングランド・ジャーナル・オフ・メディシン』には、「汚れた栄光―― ドーピングと運動パフォーマンス」という論考が掲載され、「パフォーマンス向上薬の効果は、現代スポーツ科学が提供するあらゆる非薬物的手段(特別なトレーニング法、栄養管理、バイオメカニクスなど)をも凌駕する。すなわち、薬物を使用する一部のアスリートは、使用しない自然な人間の限界を超えた“異種”のアスリート集団を形成し、スポーツの倫理と公正性を脅かしている」と、警鐘を鳴らした。

 ドーピング前後で記録が大きく変化した有名な例として、陸上のベン・ジョンソン選手などが挙げられる。

■ドーピングの指定薬剤は3種類

 現在、ドーピングに指定されている薬剤は、エリスロポエチン、アナボリックステロイド、成長ホルモン(インスリン様成長因子を含む)の3種類だ。



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