【主張】大阪女児誘拐 ネットの悪意も教えよう


 インターネット上で人と交流できるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は利便性に優れ、さまざまな用途で使われている。

 ただしそこには悪意も飛び交っていることを警戒しなくてはならない。親や学校、社会は子供にその危険性を十分に教える責務がある。

 行方不明になっていた大阪市住吉区の小学6年の女児が栃木県小山市で保護された。大阪府警は未成年者誘拐の疑いで35歳の男を逮捕した。女児はSNSを通じて男と知り合い、自宅近くの公園に呼び出された。小山市の男の自宅に連れ去られた後は、スマートフォンの使用を禁じられ、電源も切られていた。

 無事で何よりだったが、監禁中の女児の恐怖、帰りを待ち続けた家族の不安はいかばかりだったろう。女児をだましてさらった男の犯行は到底、許し難い。

 警察庁によると、昨年、SNSを通じて犯罪被害に遭った18歳未満の子供は1811人を数える。5年連続で最多を更新してきた前年より2人減ったものの、高止まりが続いている。

 このうち991人が高校生、中学生は624人、小学生は55人だった。罪種別の被害では、児童買春・ポルノ禁止法違反が944人、淫行などの青少年保護育成条例違反が749人、「略取誘拐」も42件を数えていた。ぞっとするような実態ではないか。

 一昨年、神奈川県座間市で10~20代の男女9人が殺害された事件では、男がSNSで悩みを打ち明けた被害者らを自宅に誘い出し、犯行に及んでいた。

 一方で、携帯電話・スマホの所持率はこの10年間で小学生が約2割から約6割へ、中学生は約5割から約7割へと急速に高まっている。文部科学省も災害など緊急時の連絡手段などとして、「原則禁止」としてきた小中学校への校内持ち込みを認める方向だ。

 悪意の持ち主はネット空間で言葉巧みに面会を持ちかける。昨年、SNSを通じて直接相手と会って被害に遭ったのは1468人に上る。会った理由は「金品目的」の435人に続き、「優しかった、相談に乗ってくれた」が336人を数えた。ネットを通じて知り合い、初めて会った直後に殺害された少女もいる。

 こうした事例を、家庭や授業で子供と共有すべきである。



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