【モスクワ共同】ロシアの首都モスクワの地下鉄駅に5月中旬、ソ連時代の独裁者スターリン(1879~1953年)の彫像が復活した。スターリンを巡っては、第2次大戦でソ連を勝利に導いた指導者としての評価がある一方、知識人ら多数の国民を弾圧した30年代の大粛清に対する否定的見方も根強い。公共空間への“再登場”に賛否が割れている。
彫像復活の背景には、今年が第2次大戦の戦勝80年であることや、ウクライナ侵攻を機に過去の戦勝指導者を再評価する当局の姿勢が反映されているとみられる。
新たな彫像は地下鉄の環状線にあるタガンスカヤ駅で「地下鉄開業90年」を記念して5月15日に除幕された。中心に位置するスターリンを、花束を持ったさまざまな職業、年代の人々が囲むデザインで、同駅で66年に撤去された彫像の復活に当たる。彫像復活は除幕5日前まで発表されていなかった。
改革派野党ヤブロコは声明で「祖国の歴史の中でも最も暗黒の時代を呼び起こすシンボルを復活させるのは受け入れ難い」と反発。一方、ロシア共産党は「歴史的な公正さの回復だ」と歓迎した。