広がる所得格差が深刻な影を落とす現代。低収入にあえぐ人々は、現状を打破しようと懸命にもがきますが、その道のりは険しいといわざるを得ません。なかでも、就職氷河期にあたる40代、50代となった現在も非正規雇用にとどまる人々にとって、その閉塞感は一層深いものです。本記事では、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が氷河期世代の実情を紐解いていきます。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
氷河期世代の苦悩
1980年代後半から1990年代初頭までをバブル景気といいます。株価・地価は実態の価値以上の評価が生じる高騰ぶりで、社会全体がいままでにない好景気を実感した時期がありました。
就職氷河期は、バブル崩壊をきっかけに景気が大幅に後退し、バブル時代に人員を採用しすぎていた企業が、一斉に採用人数を絞ったことで生まれた社会現象です。このころに就職活動をしていた年代の人は、雇用環境が厳しい時期であり、現在も正社員として働けず非正規雇用で働く人や、希望しない転職を繰り返している人も少なくありません。
現在、就職氷河期世代は30代後半から50歳前半の人が該当する世代の人です。バブル期における大卒の求人倍率の最高値2.86から、就職氷河期には0.99に。さらに大卒の就職率は69.7%(その期間を除く1985年〜2019年の平均は80.1%)と平年よりも10%以上低下、バブル崩壊によりフリーター・ニートが増加した時代です。いまもなお、キャリアを十分に積むことができなかったことにより、本人が望まないかたちで非正規社員や派遣として働く人がいます。
2020年に新型コロナウイルス感染症の影響で落ち込んでいた景気は回復し、世間では売り手市場といわれています。2024(令和6)年3月大学生の就職率は98.1%と、調査開始以降同時期で過去最高となっているのとは裏腹に、いまだ就職氷河期世代で正社員になりたくても、貧困状態から抜け出せず非正規雇用を続けている人がいます。