政治家の発言を「不適切」と報じるマスコミの姿勢に問題はないのか。ネットメディア研究家の城戸譲さんは「報道の中には、読者を煽情する目的のものもみられる。マスコミが勝手に作った『かもしれない失言』に惑わされてはいけない」という――。
■「コメ買ったことない」で農水相が辞任
政治家の「不適切発言」が、このところ問題視されている。なかには職を追われる者もいて、民意とのズレを感じさせる発言には、強い逆風が吹いている。一方で、ふとこんな疑問も浮かぶ。「マスコミによる『不適切発言』報道は、本当に不適切なのか」。その問いに向き合ってみると、「作られた“不適切”」の実像が見えてきた。
直近の大型失言と言えば、前農水相の江藤拓氏による「コメ買ったことない」だろう。コメ不足が指摘されるなかでの発言とあって、TPOをわきまえていないと非難が殺到。石破茂首相も、いったんは続投の方針を示したが、後に事実上の更迭を決めた。
■「博多の女性はきれい。男はまぁまぁ」は失言か
失言で注目されるのは、閣僚だけでなく、勢いに乗る野党幹部もそうだ。2025年5月26日には、国民民主党・榛葉賀津也(しんばかづや)幹事長が、街頭演説で「博多の女性はきれいだね。男性はまぁまぁだね」と発言。その後の記者会見で、メディアから発言の意図を問われて「他意はない」としつつ謝罪した。
どちらも、「なぜこのご時世で、この発言をしてしまうのか」といったパターンの発言だが、批判一辺倒だった江藤氏の発言に対して、榛葉氏の発言には擁護の声が少なくない。SNSやYahoo!ニュースのコメントを読むと、「この程度の発言で問題視するのか」といった投稿が多々見られる。
たしかに榛葉氏の発言は、ルッキズムと性差の“ダブルパンチ”と言える内容であり、世情を考えると、不適切だとの指摘も理解できる。ネットではよく「女性を下げて、男性を上げる」系の表現が炎上する。今回のケースも、男女が逆だったなら、より燃えていたのかもしれない。
ただ江藤氏との一番の違いとして、「職務に直結するか」がある。榛葉氏が女性活躍担当相だったら話は別かもしれないが、そうした立場ではない。なにより、もし不快感を覚えたならば、国民民主党に投票しなければいいだけであり、閣僚とは状況が大きく異なる。