「は~い!こんにちは!私の名前知っています?橋幸夫です」
5月21日、神奈川県で行われた『夢グループ 20周年コンサート』で、観客に向けてこう挨拶したのは、歌手の橋幸夫(82)。
この日の前日、橋が所属する夢グループの石田重廣社長が会見を開き、橋が“中程度のアルツハイマ―型認知症”であることを公表していた。
「一度歌手活動を引退していた橋さんは、24年4月に歌手活動を再開。しかし、そのわずか一年後での認知症の公表となりました。
橋さんは、引退発表前の’20年頃から日付が分からなくなるなどの症状が見られ、’22年12月の検査で軽度のアルツハイマー型認知症と診断されていたといいます。
さらに’23年11月には脳梗塞を併発しており、’24年12月の検査では認知症も中程度と診断され、症状も悪化の傾向を見せていたそうです。
認知症公表前に行われたコンサートでは、持ち歌の伴奏が流れても歌詞が思い出せないという状態でした」(レコード会社関係者)
パークサイド脳神経外科クリニックの近藤新院長は、
「アルツハイマー型認知症には、遺伝と関係がない孤発型と遺伝が関係する家族型があります。家族型は比較的若い時に発症するケースが多く、橋さんの70代後半という発症年齢を考えると遺伝的要因ではないと思われます」
と話す。
■育児と介護を前妻にまかせっきりに
だが、橋の亡き実母サクさんも、アルツハイマー型と脳血管性が併発した認知症を患っていたのだ。
橋は、実母の介護記録『お母さんは宇宙人』を’89年に出版し、ベストセラーになったことでも知られる。
「この本で橋さんは、これまで自分の一番のファンだったサクさんが認知症に冒され、彼女の妄想や徘徊に家族が翻弄される様を描いています。
また橋さんの長女Nさん(52)は、祖母の介護に奔走する両親の姿を見て育ったことがきっかけで、介護士を志すようになったとのです」(橋の知人)
本誌は’98年、都内の老人ホームで介護士として働く当時25歳のNさんを取材している。
Nさんが介護士を志すようになったのは、高校一年生のとき。彼女は、当時サクさんが入居していた介護施設を見た帰り、車の中で両親に向かってこう話したという。
《私、あの施設で働く人たちの姿を見て、感動しちゃった。だって、ほんとうに輝いているんだもん。私も、あんなふうにお年寄りのお世話をする仕事につきたいの》
この言葉に橋はひどく感動したようで、当時の取材に”あの言葉が、私にとっても妻にとっても、最高に嬉しいプレゼントでした”と感慨深い様子で答えていた。
それから長い年月がたち、自ら介護をした母と同じく認知症を患うことになった橋。彼にとって、介護士である長女はとても心強い存在にちがいないが――。