ヤマトホールディングス(以下、ヤマトHD)とJALグループが連携し導入した貨物専用機「フレイター」は、2024年4月11日の初運航から1年が経過した。いわゆる国内輸送における「2024年問題」への対応策の一環として、当初注目を集めていた本事業だが、果たして成果はあったのか。本稿では、ヤマトHDの決算情報を基に分析し、さらに、同事業の立役者となった“ある社員”の本音にも迫る。
「空飛ぶ宅急便」ヤマトHDのフレイターとは?
貨物専用機であるフレイターは、ヤマトHDが展開する5つの主要事業のうち、基幹領域であるエクスプレス事業に位置付けられており、高速かつ安定的な輸送サービスの提供を通じた新たな付加価値の創出を目指している。
本事業では、同社がリース導入したエアバスA321P2F型の貨物専用機を活用し、JALグループのスプリング・ジャパンが運航を担う。持続可能かつ強靱(きょうじん)な物流ネットワークの構築を目的に、新たな輸送モードとして運用されている。
具体的には、成田・羽田の両空港を首都圏のハブとし、新千歳・北九州・那覇の各空港を結ぶ長距離ルートを3機体制で1日13便(2025年夏スケジュール)運航することで、高頻度かつ安定した輸送網を構築。
これにより、迅速な物流ニーズへの対応と新規需要の獲得、地域産業の活性化に加え、輸送品質の継続的な向上が期待されている。
営業利益は大幅減……ヤマトHDの決算
次に、ヤマトHDの2025年3月期連結決算を見ていこう。
営業収益は1兆7,626億円と、前期比0.2%の微増となった。これは、投函サービス収入の減少を、宅急便収入の増加およびM&Aによる法人事業の拡大で補った結果である。
営業利益は142億円と、前期比64.5%の大幅減。中期経営計画に基づく先行投資が主因とみられる。経常利益は195億円で前期比51.6%減少したが、投資有価証券および不動産の売却益を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は379億円と、前期比0.8%の増加を確保した。
2026年3月期に向けては、営業収益1兆8,800億円、営業利益400億円への回復を見込み、事業ポートフォリオの最適化および財務基盤の強化を進める構えだ。
本稿の要となるフレイター事業に関する決算の詳細については、次ページで詳述する。