【台北=西見由章】中国や台湾の交流サイト(SNS)では福島第1原発処理水の海洋放出が開始されて以降、処理水の危険性を印象付けようとする偽情報が拡散した。現在デマは下火となったが、背後には対日関係を重視する台湾当局への不信感を高めて社会を分断させようとする中国側の思惑も浮かぶ。
処理水を巡る偽情報は日本政府が海洋放出方針を決定した2021年4月以降に拡散。中国のポータルサイトは同12月、青森県沖で発生したイワシの大量死と結び付けて「日本政府がすでに核廃水をひそかに放出しているとの情報がある」などとする文章を掲載した。
処理水放出が始まった23年8月以降、中台のSNSでは、人間よりも大きいエビやタコなどの海洋生物を捕獲したとする写真に「核汚染によって変異した」との説明文を付けた投稿が拡散。昨年も「核廃水海域に出現した生物」として巨大なタコなどの動画が中国のサイトに投稿された。台湾の民間非営利団体「台湾ファクトチェックセンター」は、いずれも生成人工知能(AI)の映像や画像による「捏造」などと結論付けている。