経済学者・成田悠輔さんが「 聞かれちゃいけない話 」をする新連載。第3回目のゲストは、東京大学名誉教授の上野千鶴子さん。
【画像】「高齢者は集団自決せよ」発言の真意を語る成田悠輔さん
ここでは「文藝春秋PLUS」掲載の対談 「あなたは世代間対立をあおっています 26000字ノーカット完全版・後編」 を一部抜粋して紹介する。物議を醸した「高齢者は集団自決せよ」発言の真意とは?
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上野 人間には必ず終わりがある。生命体として寿命というものがある。だから、あなたにもいずれ終わりがあるわけです。生命の初めと終わりを考えた時、再生産のためには身体的、物理的にさまざまな操作が必要になってきます。それを私たちは「ケア」と呼びましたが、それにあなたは全く触れておられない。
人間の社会の外にAIによる自律的なサイクルができたとしても、そこで何が流通していようがわれわれには関係ありません。
成田 その見方を維持できたらいいと私も思っています。
上野 そうですか。じゃあ、意見が一致してよかったですね。
成田 というか、その見方を保たないかぎり、再生産なんていう不平等で非効率なことをしないと活動も生存もできない人間の価値や存在理由を、人間自身が信じつづけることができないのではないか、と。
上野 おっしゃるとおりです。割に合わない行為です。割に合わない行為を合理的に処理するために安楽死が必要だと思われるんですか?
成田 いや、必要だとは私は思っていないです。
上野 でも、あなたの問題発言の意図の一つに、安楽死をプログラマティックにしたいという意図があったとおっしゃっていましたよね。
成田 はい。半分は予想で、半分は意見なんです。予想というのは、安楽死やそれにまつわる問題系が日本で大論争の対象になるだろうという予想です。
「ただの切り取りや印象操作じゃないでしょうか」
上野 私はその予想は外れてほしいと思っています。
成田 私も外れてくれたらうれしいです。
上野 ああ、そうですか。
成田 しかしそうはならないと思います。
上野 あなたはそれを促進する発言をしたんじゃないですか?
成田 そうなってますね。一方で、自分の意見としては、私自身は安楽死の強制はおろか認可さえすべきだとは思っていません。
上野 あの発言からは誰もそのように受け取っていないと思いますよ。
成田 私の発言そのものを聞いていただければそうとしか言っていないと思います。安楽死については一貫して個人的には反対か中立。しかしそれを議論したり促進したりしようとする声は避けられないし避けるべきではない、と。
別の受け止められ方をしているのは、ただの切り取りや印象操作じゃないでしょうか。そういう理解の仕方で仮想敵を作って叩くことが彼らにとって心地よかっただけじゃないかと。
上野 彼らって、メディアの人たちですか?
成田 メディアというよりは、私の発言について騒いでPVをかき集めたり正義感に浸ったりしたいSNSや政治界隈の有象無象です。
※本記事の全文(約11000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(上野千鶴子×成田悠輔「 あなたは世代間対立をあおっています 26000字ノーカット完全版・後編 」)。全文では下記の内容をご覧いただけます。
・市場対国家ふたたび
・「再生産」をデジタルで乗り越えられるか
・人間が介在しない「生産・消費」活動
・安楽死が必要だと思われるんですか?
・誤解もコミュニケーションの一部
・高額療養費制度見直し問題
・安楽死と認知症
・「読者をなめるんじゃないよ」と言いたい
・よくぞ作った介護保険
上野 千鶴子,成田 悠輔/文藝春秋 電子版オリジナル