トランプ氏、なぜ名門大「目の敵」に?  米労働者層に教育界不信


【写真】ハーバード大学

 「反ユダヤ主義を助長した」ことを理由としているが、背景には、トランプ氏の支持層である労働者階級が抱く高等教育界への根深い不信や嫉妬、中国の米学術界への浸透も指摘される。

 「ハーバードが得ていた資金(補助金)を各地の職業訓練に配分したい。そこで自動車の製造法などを教える」。トランプ氏は、政府と同大が結ぶ全契約の打ち切りが伝えられた翌日の28日、記者団にこう語り、エリート育成資源を労働者教育に振り替える案を示した。

 名門大は主要メディアや官僚機構と並び、早くからトランプ政権の攻撃対象となっていた。政権の青写真とされた保守系グループによる政策集「プロジェクト2025」は、進歩主義的なエリート大の幹部が「謙虚で愛国心に富む労働者ではなく、高学歴のエリートが運営する秩序」を形成しようとしていると非難する。

 ギャラップ社の世論調査によると、米高等教育への信頼度は2015年6月に57%だったが、24年6月には36%に低下した。とりわけ保守派は、人種的少数派を入学選考で優遇する「アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)」やリベラルな教授陣に「懸念を深めてきた」(ニューヨーク・タイムズ紙)とされる。

 一方、ノーム国土安全保障長官はハーバード大の留学生受け入れ資格剥奪に当たり、同大が「中国共産党と協調している」と主張した。ロイター通信によると、米政府が制裁対象に指定している中国共産党の傘下組織「新疆生産建設兵団(XPCC)」の関係者に、同大が公衆衛生関連の研修を施していたという。

 下院の中国問題特別委員会は昨年公表した報告書で、過去10年に連邦政府が提供した「数億ドル規模」の研究資金が、米大学との提携プログラムを通じて中国の防衛関連大学などに流れたと指摘した。ただ、エリート大への圧力強化は優秀な学生を米国から流出させ、長期的な国力低下を招くジレンマにもつながる。

 トランプ氏自身は、東部の名門私立8大学「アイビーリーグ」の一角を成すペンシルベニア大出身の「エリート」。もっとも、同氏には不正入学疑惑もささやかれている。 



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