中国は3日、北京の天安門広場で「抗日戦争勝利80年」を記念する大規模な軍事パレードを実施しました。習近平国家主席は、ロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記と並び、米本土攻撃が可能な新型兵器群を観閲。この異例の並びは、中露朝3カ国の強固な連携姿勢を国際社会に強くアピールするもので、演説では「世界一流の軍隊建設を加速する」と表明しました。
この軍事力と中露朝の結束は、米国に対抗する新たな国際秩序を構築する狙いがあるとみられ、近接する日本の安全保障環境に与える影響が深く懸念されています。
北京の天安門広場で行われた抗日戦争勝利80年記念軍事パレードで演奏する軍楽隊の様子
習近平主席、抗日戦争の役割と台湾統一への決意を強調
演説で習主席は、「抗日戦争」における中国共産党の重要な役割を改めて強調しました。さらに、「今日、人類は再び平和か戦争かの選択に直面している」と述べ、「国家の主権と統一、領土の一体性を断固として守らなければならない」と主張。これは、台湾統一への強い決意を示唆するもので、「中華民族の偉大な復興」は決して止められないとも語り、国家としての目標を明確に打ち出しました。
演説後、習主席は黒塗りの車で長安街に整列した部隊を閲兵し、再び天安門楼上に戻った後に盛大なパレードが開始されました。この際、習主席から見て右側にプーチン大統領、左側に金正恩総書記が並ぶという構図が演出され、歴史的な「抗日」の記念日を利用した中露朝3首脳の結束ぶりが誇示されました。
中国の抗日戦争勝利80年記念軍事パレードで、新型兵器が披露される様子
新型SLBM「JL-3」など戦略核戦力を初公開
今回のパレードでは、多数の新型兵器が初公開または披露され、中国の軍事力近代化が鮮明になりました。特に注目されたのは、新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「JL(巨浪)3」で、射程は約1万2000キロメートルとされ、中国近海から米本土を射程に収める能力を持つとされています。
また、最新の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「DF(東風)61」や空中発射長距離ミサイル「JL(驚雷)1」も登場しました。新華社通信によると、これらのミサイルはいずれも核弾頭を搭載可能であり、「陸海空の戦略核戦力を初めて同時に公開した」と発表されました。これにより、中国の核抑止力における多角化と強化が世界に示されました。
その他にも、新型の無人機、極超音速ミサイル、ステルス戦闘機など、現代戦に対応する先進兵器が多数披露されました。さらに、昨年新設された「情報支援部隊」や、「軍事宇宙部隊」「サイバー空間部隊」といった各軍種を一体運用する統合作戦を支える新しい部隊も初めて公の場に姿を見せ、中国軍の指揮・情報・宇宙・サイバー領域における能力向上が示唆されました。
国際社会の反応と日本の安全保障への影響
今回のパレードには、イランのマスード・ペゼシュキアン大統領やインドネシアのプラボウォ・スビアント大統領など、26カ国の国家元首・首脳らが出席しました。しかし、米欧の主要国の政府高官は出席を見送ったほか、日本政府も代表を派遣しませんでした。一方、日本の鳩山由紀夫元首相は個人的にパレードに参加しています。主要国の政府高官が不在だったことは、中国の今回の軍事力誇示に対する国際社会の複雑な視線を反映しています。
北京での軍事パレードは、建国70周年を記念した2019年以来、約6年ぶりとなります。習政権下では、2015年9月の「抗日戦勝70年」を含め、今回で3回目の開催となりました。
まとめ
中国が「抗日戦争勝利80年」を記念して実施した大規模な軍事パレードは、新型兵器の披露と中露朝首脳の結束を通じて、その軍事力強化と国際秩序再編への強い意志を国際社会に示しました。特に、米本土を射程に収める新型核搭載可能ミサイルの公開や、宇宙・サイバー空間部隊の登場は、中国が「世界一流の軍隊」を目指すという習近平主席の公約が着実に実行されていることを示しています。
この動きは、東アジアの地政学的バランスに大きな影響を与え、とりわけ日本の安全保障環境にとって看過できない懸念材料となっています。周辺国、特に日本の今後の対応が注目されます。
参考文献
- Yahoo!ニュース / 読売新聞