ザ・ビートルズ、ザ・ローリングストーンズと並び、「英国三大バンド」と称されることが多い「ザ・フー」のゴタゴタがファンや業界を驚かせている。
焦点となっているのは、長年、ツアーなどを共にしてきたドラマー、ザック・スターキーの解雇を巡る見解の相違だ。
スターキーはビートルズのドラマー、リンゴ・スターの息子。ザ・フーのツアーには1996年から参加しており、ファンの間での評価は高い。オリジナル・メンバーのキース・ムーンよりもバンドでの演奏歴も長くなっている。ムーンは早逝したので、バンドでの演奏歴は14年ほどだ。
正式メンバーではなく、途中抜けて別のバンドに参加、といったインターバルはあるにせよ、スターキーはすでにザ・フーに関わってから30年近いキャリアを誇る。
が、先月、ザ・フーはスターキーを解雇したことを発表した。
この時、ヴォーカルのロジャー・ダルトリーはスターキーの演奏に不満があることも公表している。一方でスターキーは、この解雇を快く受け入れたわけではなく、「悲しい」気持ちを表明した。
ところがこの件はいったん、元のサヤに収まることで決着を見る。
ギタリストのピート・タウンゼンドによると、いろいろな誤解があったが機材のトラブルなどの要素もあった、円満に話し合いが進んだのでこれからもスターキーとプレイしていく、とのことだった。
これから北米でのフェアウェル・ツアーも始まるところだったので、ファンにとっても良い決着――というのが大方の見方だったのだが、話はこれで終わらなかった。
5月になり、バンドは再度、スターキーが離脱することを発表。
タウンゼンドは円満な別れであることを強調しているが、スターキーはこれを否定。「辞めるつもりはなかった」と言っている。やはり実質的にはクビだったようである。
大臣の更迭を辞任と言い換えるようなことはよく見られるが、世界的バンドにおいて同様のことが行われたのは、ファンにとって大きな驚きだっただろう。
また、イメージ戦略上、まったくプラスにならない裏のゴタゴタが表に出ているあたり、ザ・フーの統治能力を心配する向きもいるに違いない。